本学は4月29日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.67を発行しました。
2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、大学院ヘルスシステム統合科学研究科先端医用電子工学研究室の紀和利彦准教授らのテラヘルツ波ケミカル顕微鏡を用いて乳がん細胞の高感度検出に成功した成果について紹介しています。
がんマーカーを用いた早期診断は、低侵襲かつ迅速簡便な診断方法として期待されています。がんマーカーの検出のためには、特定のがんマーカーを認識し、結合する物質の開発が重要です。一方で、岡山大学とケベック先端科学技術大学院大学(INRS、カナダ)は、2016年に大学間協定を締結し、岡山大学の開発した「テラヘルツ波ケミカル顕微鏡」の高精度化と産業応用探索を行ってきました。
今回、紀和准教授らのグループは、INRSとカールトン大学が新規に開発した、乳がんを選択的に認識するアプタマー※1をテラヘルツ波※2ケミカル顕微鏡に適用することで、1mL中に含まれるわずか10個の乳がん細胞を高感度に検出することに世界ではじめて成功しました。これは、テラヘルツ波ケミカル顕微鏡を用いた高感度がん細胞検出が可能であることを、はじめて実証できたといえます。今回のこの成果により、がん早期診断に必要な新規がんマーカーの開発、新薬の開発に大きく貢献することが期待されます。
岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今回の紀和准教授とINRSの尾崎恒之教授らの国際共同研究も同事業などにおいて連携を強化させ、イノベーティブな成果を生み出し、社会に新たな価値を提供することができています。今後も強みある医療系と異分野融合から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術、健康維持増進へより早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。
※1 アプタマー
特定の細胞を認識し、結合する物質のこと。
※2 テラヘルツ波
1テラヘルツ=1兆ヘルツの電磁波のこと。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.67:Technology to rapidly detect cancer markers for cancer diagnosis
<Back Issues:Vol.59~Vol.66>
Vol.59:Role of commensal flora in periodontal immune response investigated (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)森田学教授、福原大樹医員)
Vol.60:Role of commensal microbiota in bone remodeling (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)森田学教授、内田瑶子歯科医師)
Vol.61:Mechanical stress affects normal bone development (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)池亀美華准教授)
Vol.62:3D tissue model offers insights into treating pancreatic cancer (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 狩野光伸教授&大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)田中啓祥助教)
Vol.63:Promising biomarker for vascular disease relapse revealed (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)渡辺晴樹助教、佐田憲映准教授)
Vol.64:Inflammation in the brain enhances the side-effects of hypnotic medication (岡山大学病院薬剤部 北村佳久准教授)
Vol.65:Game changer: How do bacteria play Tag? (大学院環境生命科学研究科(農学系)田村隆教授)
Vol.66:Is too much protein a bad thing? (異分野融合先端研究コア 守屋央朗准教授)
<参考>
・「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
・岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」
【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:[email protected]
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.67 発行
2019年05月10日