国立大学法人 岡山大学

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イネのカドミウム吸収に関与する主要遺伝子を発見

2012年05月15日

<概要> カドミウム(Cd)は人体にとって毒性の強い重金属で、公害病の一つであるイタイイタイ病の原因物質です。我々が摂取するカドミウムの半分近くはコメ由来であるため、コメ中のカドミウムを軽減させることは非常に重要です。今回、我々はイネのカドミウムの吸収に関与する主要な遺伝子Nramp5を発見しました。Nramp5は根の外皮と内皮細胞に局在し、環境中のカドミウムの根の細胞への取り込みに働いています。この遺伝子を破壊すると、カドミウム汚染土壌に栽培しても、コメ中のカドミウムがほとんど検出されませんでした。しかし、この遺伝子は本来必須栄養分であるマンガンを吸収するために必要であり、遺伝子破壊株では、マンガンの吸収も減少し、収量に負の影響が見られました。今後この遺伝子を応用することで、カドミウムを含まない安全なコメが生産できます。
  • カドミウム(Cd)は動植物にとって毒性の強い重金属です。特に、環境中のカドミウムは食物連鎖を経て、人体に悪影響を与えます。公害病の一つであるイタイイタイ病はカドミウムを含むコメを摂取したことが主な原因です。
  • 我々が摂取するカドミウムの半分近くは主食のコメに由来します。したがって、コメ中のカドミウムを低下させることは健康上非常に重要なことです。しかし、長い間、環境中のカドミウムはどのようにイネに取り込まれるのかについては明らかではありませんでした。
  • 私どもはイネからNramp5という遺伝子を同定し、この遺伝子がイネのカドミウム吸収に関与する主要な遺伝子であることを突き止めました。
  • Nramp5は主に根の外皮と内皮細胞の遠心側に局在しています。この遺伝子を破壊すると、土壌から根へのカドミウムの吸収がほとんどできなくなります。またカドミウム汚染土壌で栽培してもコメ中のカドミウムがほとんど検出できない程度に減少しました。
  • OsNramp5は本来イネの生育に欠かせない必須元素マンガン(Mn)の吸収に必要な輸送体です。したがって、この遺伝子が破壊されると、マンガンの吸収も減少し、生育にマイナスの影響を与えてしまいます。
  • 今後、この輸送体の選択性を変化させることによって、マンガンの吸収を抑えず、カドミウムの吸収のみを抑えて、カドミウムのない安全なコメ作りに貢献できます。

  • 発表雑誌:Plant Cell
  • 論文タイトル:Nramp5 Is a Major Transporter Responsible for Manganese and Cadmium Uptake in Rice
  • 岡山大学資源植物科学研究所・教授・馬 建鋒
  • 添付資料

主な共同研究者
 馬 建鋒・岡山大学資源植物科学研究所・教授(代表)
 佐々木明正・岡山大学資源植物科学研究所 博士課程学生(馬グループ)
 山地直樹・岡山大学資源植物科学研究所 助教(馬グループ)
 横正健剛・岡山大学資源植物科学研究所 博士研究員(馬グループ)

研究助成
 文部科学省 新学術領域「植物環境突破力」
 農林水産省「新農業展開ゲノムプロジェクト」

詳細は報道発表資料をご覧ください。

掲載論文はこちらをご覧ください

【お問い合わせ先】
岡山大学資源植物科学研究所 教授 馬 建鋒
(電話番号)086-434-1209

(12.05.15)