本学は3月20日、植物ウイルス感染から貴重な資源である植物を守る方策について考えるワークショップ「第12回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム 植物防疫の最前線 ~異分野融合共同研究によるウイルス対策~」を本学津島キャンパスで開催しました。
農林産業の現場などでは植物ウイルス感染によって産業的な被害を受けるだけではなく、観光資源への被害などにより社会的・文化的打撃を被っています。ウイルスから植物を守る術については、現在さまざまな研究が進められています。
今回のプラットフォームでは、研究拠点を務める本学と補完研究機関である琉球大学などが密に連携し、異分野融合共同研究による植物防疫の取り組みについて、当該分野の研究者らが叡智を共有化することで効果的な研究開発や社会実装の強化促進を図りました。
具体的には、まず革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)でコンソーシアム・プログラム・マネージャー(研究管理総括役)を務める佐藤法仁リサーチ・アドミニストレーター(URA)が、同事業の概要と取り組みについて紹介しました。そして、琉球大学農学部植物病理学研究室の関根健太郎准教授が「網羅的ウイルス検出技術を用いた体系的な病害防除」と題して、いままで判別が困難であった植物ウイルスの二本鎖RNA網羅的検出技術(DECS法)を利用した早期検出キットと病害対策のあり方について具体的に紹介。本学大学院自然科学研究科(工学系)生体機能分子設計学研究室の世良貴史教授は、「人工核酸結合タンパク質を用いたウイルス不活性化技術の確立」と題して、主にウイルスの9 割を占めるRNA ウイルスのゲノム配列を高い親和性で特異的に認識する人工RNA 結合タンパク質を正確にデザインして、植物と動物に「確実に」役立つ、革新的なウイルス不活性化技術について紹介しました。
さらに後半は、本学大学院環境生命科学研究科の神崎浩研究科長・教授が「岡山大学における農学研究の最前線」と題して、本学で取り組まれている先導的な防疫研究や社会実装の実例について講演。農林水産省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は、「わが国における植物防疫の現状と未来~研究・現場支援策を含めて~」と題して、わが国における植物ウイルスの被害の現状や対策の取り組み、またこれまで以上の産学官連携による植物防疫の革新性の追求について触れました。
総括として、同事業でコンソーシアム・プログラム・ディレクター(全体統括役)を務める山本進一理事・副学長(研究担当)から、同事業により商品化や研究開発が進められているものについて紹介があり、異分野融合の難しさとその困難を克服した際の革新性について語られました。今後も精力的に異分野融合研究開発を進めていくとのことで、参加した研究者らとこれまでの視点と異なる異分野融合からの革新的な植物防疫のあり方などについて熱心に議論を重ねました。
なお、本ワークショップは本学が研究拠点(代表研究者:本学大学院自然科学研究科(工学系)の世良貴史教授)を務める農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」において得られた最新研究の叡智を社会に広めるために実施する「革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム」の取り組みの一環として実施されました。今後も農林畜産水産分野や社会を革新する研究開発を精力的に押し進め、社会実装を目指します。
農林水産省革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)://www.okayama-u.ac.jp/user/ibunyapj/index.html
<参考:革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム(過去5回)>
第7回 ウシ白血病ウイルス(BLV)から牛を守る革新的技術の社会実装に向けて(2015年11月26日)
第8回 世界規模での人工核酸結合タンパク質を用いたウイルス不活性化技術を目指す(2015年12月15~20日)
第9回 革新的技術でウイルス感染から家畜を守る-日中叡智共有化ワークショップ2-(2016年3月5~8日)
第10回 革新的技術でウイルス感染から家畜を守る-日中叡智共有化ワークショップ3-(2016年3月8~9日)
第11回革新的早期検査法とワクチン開発で牛白血病ウイルス(BLV)から牛を守る(2016年3月15日)
【本件問い合わせ先】
岡山大学リサーチ・アドミニストレーター(URA)執務室
TEL:086-251-8919
(16.03.31)