文部科学省の「研究大学強化促進事業」に選定された機関のうち、自然科学研究機構(NINS)や本学などでつくる「大学研究力強化ネットワーク」*が6月2日、筑波大学東京キャンパス文京校舎(東京都文京区)で、平成28年度第1回大学研究力強化ネットワーク・カンファレンス「国際基準の大学評価の在り方を考える」を開催しました。
今回のカンファレンスは、現在、世界的な大学改革の波が押し寄せている中で、海外における大学評価の在り方を学ぶことで、日本での大学評価の在り方について考えるものです。主催者であるNINSの小泉周特任教授の開催挨拶に続き、同ネットワークで大学・ランキング指標タスクフォース座長を務める本学の山本進一理事・副学長(研究担当)が「大学評価の今」と題して講演。さまざまな報道などで大きく取り上げられる世界大学ランキング指標の問題点に触れ、日本の大学が持つ独自性や多様性を失うことにもなりかねないとの危惧を表しつつ、定量的・定性的な両面を組み合わせた大学評価が必要であると述べました。
独立行政法人大学改革支援・学位授与機構研究開発部の林隆之教授は、「国立大学法人評価における研究評価-多様な研究活動の評価と根拠指標の設定」と題して講演。研究の水準に関する2つの分析項目のうち、特に「研究成果の状況」を取り上げ、その水準判定について言及。卓越した研究業績を示す根拠データを具体的に示すことの必要性、特に社会・経済・文化的に貢献できる根拠データの明示を強調しました。
エルゼビア社SciVal(サイバル)のモハメッド・アイサティ(M'hamed Aisati)コンテンツ分析ディレクターは、「大学評価:意味のある評価指標に向けての挑戦と機会(Measuring university performance: challenges and opportunities towards a meaningful assessment framework)」と題して講演。英国高等教育財政審議会(Higher Education Funding Council for England:HEFCE)の「研究における卓越性の枠組み2014(Research Excellence Framework:REF 2014)」など、世界的に評価機関が増加傾向にあることや大学ランキングが重要視されていることについて言及。一方で、現状の課題である評価基準のばらつき、社会にもたらすインパクトを計る困難さを指摘しました。このような課題に対処し、公平な評価をするための「共通言語」として、大学など高等教育・研究機関に必要と思われる主要な共通評価指標を定義した「スノーボールメトリックス(Snowball Metrics)」の取り組みも紹介されました。
参加した行政機関、各大学、研究機関、リサーチ・アドミニストレーター(URA)、研究推進担当の事務職員ら約40人は、海外における大学評価の在り方を学び、現状の課題である評価指標の透明性・公平性について、今後も行政機関、大学、研究機関などが協力していく必要性を認識しました。
本学は同ネットワークの運営委員として参画。同ネットワークを構成するタスクフォース(プロジェクトのためのチーム)のひとつ「大学ランキング指標に関するタスクフォース」の幹事機関も務めています。日本の研究力強化の促進のため、各機関と密に連携しながら国内外に向けて効果的な研究大学運営の在り方についての提言を発信していきます。
大学研究力強化ネットワーク*
文部科学省「研究大学強化促進事業」に採択された22機関を中心として、大学の研究力強化を強く推進する機関に呼びかけ、賛同を得られた機関で構成(窓口:NINS)。各大学の個性・特徴を尊重しつつ、研究者-URA-事務担当者の三者の緊密な連携の下、大学・研究機関の枠を超えて、大学の研究力強化および支援機能の拡大を図る方策に関する議論と情報交換を行う。「共同して行うべきところは共同して行う」という発想の下、相互の連携の推進を図り、また、必要な施策について行政等に働きかけるなど、個々の大学の研究力強化に資する活動を行っている。
大学研究力強化ネットワークホームページ:http://www.runetwork.jp/
【本件問い合わせ先】
岡山大学リサーチ・アドミニストレーター(URA)執務室
TEL:086-251-8919
(16.06.15)