本学が研究拠点を務める「革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム」は1月16日、日本の重要な農業をウイルスから守るための技術開発を異分野の視点から考えるシンポジウム「農工異分野融合研究開発によるウイルス対策の最前線」を琉球大学(沖縄県中頭郡西原町)で開催しました。
今回のシンポジウムは、本事業で取り組んでいるウイルスの早期高感度検査と感染防止策をテーマとし、特に農学と工学の異分野融合から生まれる革新的な技術開発について最新の知見を紹介しました。
本学大学院自然科学研究科(工学系)は研究拠点を務めており、同研究科の世良貴史教授は「先導・革新的人工核酸結合タンパク質を用いたウイルス不活性化技術の確立と社会実装について」と題して講演。自らのグループが開発した、標的ウイルスの遺伝情報である「ゲノムRNA」を短時間で切ることのできる“人工のハサミ”「人工RNA切断酵素」の開発とその植物への応用例について紹介しました。
また、補完研究機関である鹿児島大学学術研究院工学域工学系の新地浩之助教が「糖鎖ナノテクに基づくウイルスの超高感度検査法の開発」と題して講演。同大学の隅田泰生教授らが開発した、ナノテクノロジーを応用したウイルスの超高感度検出技術について実例を基に紹介しました。
会場となった沖縄県の植物ウイルス対策の関係者ら以外にも、日本各地から研究者や企業、自治体関係者などが参加。異なる研究領域の融合から生まれる、今までにない技術開発とその社会実装について熱心に議論を重ねました。
また、シンポジウムでは、補完研究機関である琉球大学農学部の関根健太郎准教授らが開発した、今まで判別が困難であった植物ウイルスの二本鎖RNA網羅的検出技術(DECS法)を利用した早期検出キットと病害対策のあり方について考えるワークショップも開催。参加者らが実際にキットを使いながら実習し、現場での利用促進についての議論を行いました。
農業の現場では、さまざまなウイルスによって経済的・社会的な損失が発生しており、世界的に大きな問題となっています。これらの状況を打開するため、ウイルス感染から植物を守る早期診断法や感染防止の薬剤などの研究開発が強く求められています。今後も活発な研究と開発を行い、そこで得られた叡智の普及とともに、社会で問題となっているウイルス対策を異分野融合の下、これからも精力的に押し進めて行きます。
農林水産省革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)://www.okayama-u.ac.jp/user/ibunyapj/index.html
<参考:革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム>
第14回 革新的なウイルス対策で地域養鶏畜産業の保護・活性化を図る
第15回 日中の叡智でウイルスから動物と植物を守る
国際的な医農融合研究の強化促進を目指す 第31回岡山大学フューチャーセッション
【本件問い合わせ先】
大学院自然科学研究科(工学系)教授 世良貴史
(革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム事務局)
TEL:086-251-8194
(17.02.14)