本学は3月19日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.38を発行しました。
2012年より本学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年4回発行。国際科学雑誌「Science」を扱うAAAS(米国科学振興協会)のメーリングリストを利用し、世界の研究者等にニュースやトピックスを交えて配信し、本学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上を推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、強みある医療系分野の更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)インプラント再生補綴学分野の窪木拓男教授と大島正充助教、それに同大学院研究科(医学系)分子医化学分野の大野充昭助教、理化学研究所多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームの辻孝チームリーダーらの研究グループが発表した、大型動物モデルにおける構造・機能的に完全な歯の再生に成功した研究成果について紹介しています。
これまでに、窪木教授らと、理化学研究所多細胞システム形成研究センター・器官誘導研究チームの辻チームリーダーらは共同研究を進め、世界に先駆けて開発した器官・臓器の種となる器官原基を再構築する細胞操作技術(器官原基法)を基に、マウスにおける歯胚や歯周組織の器官としての再生技術の開発を進めてきました。この技術はこれまでの組織再生工学が目指した概念と異なり、上皮間葉相互作用を用いた器官の発生プロセスを完全に模倣し、器官の形態や機能を完全に再現する未来の臓器置換医療を支える基幹技術となるものです。今後、これらの技術がヒトに応用されるためには、大型動物モデルによる本技術の再現が必須と考えられてきましたが、細胞シーズの探索や細胞操作技術の最適化を含め、齧歯類以外の大型動物では実現していませんでした。
今回、ビーグル犬から永久歯胚細胞を採取して、器官原基法により再構築したイヌ再生歯胚を顎骨内に移植することにより、構造的・機能的に完全な永久歯の再生を大型動物モデルで初めて実証しました。
今後、再生歯胚の利用による歯科再生治療を実用化するための最大の課題は、歯胚再生を可能とする細胞シーズを取得することです。本研究においても若齢期の歯胚細胞を利用した研究であり、歯を失った成人・高齢者にも適応しうる技術とするためには、歯胚を誘導可能な幹細胞の探索が必要です。窪木教授らは、これらの課題に取り組むことによって、臨床実用化が可能な技術となるよう研究開発を進めたいと考えています。
本学は、平成25年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術として、より早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.38:Bioengineered tooth restoration in a large mammal
<Back Issues:Vol.31~Vol.37>
Vol.31:Prevention of RNA virus replication (大学院自然科学研究科(工学系)世良貴史教授)
Vol.32:Enzyme target for slowing bladder cancer invasion (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)竹田哲也助教)
Vol.33:Attacking tumors from the inside (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)藤原俊義教授)
Vol.34:Novel mouse model for studying pancreatic cancer (大学院自然科学研究科(工学系)妹尾昌治教授)
Vol.35:Potential cause of Lafora disease revealed (大学院自然科学研究科(工学系)佐藤あやの准教授)
Vol.36:Overloading of protein localization triggers cellular defects (異分野融合先端研究コア 守屋央朗准教授)
Vol.37:Protein dosage compensation mechanism unraveled (異分野融合先端研究コア 守屋央朗准教授)
<参考>
Okayama University e-Bulletin://www.okayama-u.ac.jp/user/kouhou/ebulletin/
【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
E-mail:[email protected]
(17.03.21)