Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.46 発行
2017年12月05日
本学は11月30日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.46を発行しました。
2012年より本学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者等にニュースやトピックスを交えて配信し、本学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、強みある医療系分野の更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、大学院自然科学研究科(工学系)生体機能分子設計学研究室の世良貴史教授、森友明特任助教らの、遺伝子を操作する“人工転写因子”でがんの増殖を阻害 がんの増殖を担う遺伝情報を読めないようにする革新的技術を開発を紹介しています。
世良教授らの研究グループは、がんの遺伝情報のひとつである「がん増殖遺伝子」を読めなくする、テーラーメイドの人工タンパク質『人工転写因子』の開発に世界で初めて成功しました。この人工転写因子は、世良教授が開発した、標的のがん増殖遺伝子に特異的に結合する人工DNA結合タンパク質に、遺伝子を読めないようにするタンパク質を融合させた人工タンパク質です。
がんは、さまざまな要因によって引き起こされ、多様なメカニズムで進行しますが、その中で、がんの誘発や増殖に関与する遺伝子が増幅されたり、遺伝子の変異により活性化されることにより、正常な状態よりも当該タンパク質が過剰に生産され、最終的にがんになることが知られています。この場合、増殖に関係する遺伝子が読み取られないようにできれば、その遺伝子は発現することなく、結果がんの進行を食い止めたり、がんそのものを予防し、生活の質(Quality of life ; QOL)を向上させることが可能となります。世良教授らは、この点に着目し、研究開発を実施。デザインした人工転写因子を用いて、肺がんと食道がんで高発現し、がん化を促進する「SOX2遺伝子」の発現を効果的に抑制できることを細胞レベルだけでなく、動物レベルでも確認しました。この手法は、ほかのがん関連遺伝子に適応可能であり、それらの遺伝子の働きによるさまざまながんの予防や創薬への応用が期待されます。また、本技術は、がん関連遺伝子だけではなく、あらゆる疾患関連遺伝子にも応用が可能であるため、今後、革新的な技術として私たちの生活に大きく役立つことが期待されます。
本学は、平成25年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術として、より早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.46:New method for suppressing lung cancer oncogene
<参考>
ウイルスの遺伝情報を切断し、増殖を防ぐ革新的技術を開発 “人工のハサミ”でインフルエンザウイルスを 5 分で切断(岡山大学プレスリリース 2016 年 10 月 28 日)
<Back Issues:Vol.39~Vol.45>
Vol.39:Successful test of retinal prosthesis implanted in rats (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)松尾俊彦准教授、大学院自然科学研究科(工学系)内田哲也准教授)
Vol.40:Antibodies prolong seizure latency in epileptic mice (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)西堀正洋教授)
Vol.41:Inorganic biomaterials for soft-tissue adhesion (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)松本卓也教授)
Vol.42:Potential drug for treating chronic pain with few side effects (自然生命科学研究支援センター 宮地孝明准教授)
Vol.43:Potential origin of cancer-associated cells revealed (大学院自然科学研究科(工学系) 妹尾昌治教授)
Vol.44:Protection from plant extracts (中性子医療研究センター 小野俊朗教授)
Vol.45:Link between biological-clock disturbance and brain dysfunction uncovered (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)宝田剛志准教授)
<参考>
Okayama University e-Bulletin://www.okayama-u.ac.jp/user/kouhou/ebulletin/
【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
E-mail:[email protected]
(17.12.05)
本号で紹介した研究成果を担当した本学大学院自然科学研究科(工学系)の世良貴史教授 | がんの原因遺伝子「SOX2」の発現を抑制する「人工転写因子」の導入でがんは増殖ができない。この技術はあらゆる疾患の予防・治療にも応用が可能! |
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