4月4日、国際的に有名な学術雑誌「Nature」創刊150年を記念して「日本の科学の未来 –持続可能な開発目標の達成に向けたビジョン- 」と題した記念シンポジウムが東京大学安田講堂で開催されました。同誌編集長であるMagdalena Skipper(マグダレーナ・スキッパー)氏と、2016年にノーベル生理学・医学賞を単独受賞した東京工業大学の大隅良典栄誉教授の基調講演やパネルディスカッション、「Your Vision - 社会へ貢献するあなたの研究ビジョン -」と題した20題のポスターセッションが行われました。セッションでは、自身の研究が将来どのようにして、より良い、そして持続可能な社会へ貢献できるかについての仮説と展望を示した取り組みが事前に公募され、本学からは、大学院ヘルスシステム統合科学研究科生体機能分子設計学研究室の世良貴史教授と同研究科生体機能再生再建医学研究室の松尾俊彦准教授の2題の研究が選ばれました。
世良教授は「Fighting viral infections for agriculture and medicine」と題して、自身が世界で始めて開発したウイルスの遺伝情報を切る“人工のハサミ”である「人工RNA切断酵素」について紹介。この技術は人、動物、植物に使える所謂「三方よし」の画期的な革新技術であり、現在、実装研究を進めています。松尾准教授は「Photoelectric dye-coupled thin film as retinal prosthesis for the blind to gain the sight again」と題し、網膜色素変性症などの疾患に対する治療法として、高コストではなく、保存が手軽で、処置も簡便な光電変換色素を使った人工網膜の開発(岡山大学方式人工網膜OURePTM)について紹介。研究が将来社会にどのように影響を与えるかについてのビジョンをSTI for SDGsの視点から熱心に説明しました。
参加した世良教授は、「説明を聞いてくださった多くの方々のポジティブな反応から、私たち研究チームの技術が医療や食糧問題などの解決に大きく貢献できることを再確認でき、非常に勇気づけられました」。松尾准教授は「来場された多くの方々から多くの岡山大学方式の人工網膜開発に対するビジョンについての質問をして頂けてうれしかったです」とコメントしています。セッションには松尾准教授の共同研究者である大学院自然科学研究科(工学系)高分子材料学研究室の内田哲也准教授や佐藤法仁副理事・URAらも参加。シンポジウムに参加した産学官民など、多様な人たちへ本学のSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みの紹介と共に、活発な議論やビジョンの社会への実装などについての意見交換などを行いました。
本学では、槇野博史学長が就任時に掲げた “槇野ビジョン” のもと、SDGsを大学経営の中核のひとつに置き、全学を挙げて地域などのさまざまなステークホルダーらと共にSDGsを強力に推進しています。今回のシンポジウムの参加で本学や研究を広く紹介できただけでなく、STI for SDGsを推進するリサーチ・ユニバーシティ(研究大学)である大学として、さらなる研究の深化と開発した技術の社会実装によって、課題解決と新たな価値を社会に提供することができるように邁進していきます。
※1 STI for SDGs
STIとは、Science(科学)、Technology(技術)、Innovation(イノベーション)の頭文字を取ったもの。「科学技術・イノベーション」を意味します。「STI for SDGs」は、 SDGsの取組・達成に向けて貢献するSTI(科学技術・イノベーション)を意味します。
【本件問い合わせ先】
大学院ヘルスシステム統合科学研究科 教授 世良貴史
TEL:086-251-8194
大学院ヘルスシステム統合科学研究科 准教授 松尾俊彦
TEL:086-251-8106
岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。