本学は3月24日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.79を発行しました。
2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)脳神経内科学分野の阿部康二教授らの認知症リスクの指標となる血中ペプチドバイオマーカーを発見について紹介しています。
日本における認知症患者は年々増加しており、厚生労働省によれば2025年には750万人に達し、高齢者の5人に1人が認知症となると予測されています。認知症はある日突然発症するものではなく、徐々に認知機能が低下し、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)を経て認知症に至ります。現在、残念ながら認知症に有効な治療薬はなく、認知症の罹患リスクを早期に認識し、症状が軽いうちの予防や認知症の悪化にブレーキをかけるため、本人と社会の双方の努力が必要となります。
今回、阿部教授と株式会社プロトセラは、MCIとアルツハイマー病(AD)患者の血液を解析し、特異的に存在する4種類のペプチドを発見。この4種類のペプチドが、認知症のリスクを発見するバイオマーカーセットとして有用であることを確認しました。その結果、少量の血清(30µL)から認知症をリスク判定することができるようになりました。
今回発見された新しい血中ペプチド性バイオマーカーセットは、新規で、迅速で、非侵襲性で、定量性の高い、低コストな認知症スクリーニング法を提供するほか、これまでの血清アミロイドβや血漿タウを標的にした認知症治療薬開発の失敗に対して新しい創薬アプローチを提供する可能性があります。
なお、株式会社プロトセラは、このペプチドバイオマーカーセットを指標に、軽度認知障害(MIC)の発見と疾患リスクを約1週間程度で判定する『ProtoKey®認知症リスク検査法』を開発し、自由診療の検査サービスとして今春より医療機関へ提供を開始する予定です。
岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も強みある医療系や異分野融合から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場が求める革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.79:Novel blood-based markers to detect Alzheimer's disease
<Back Issues:Vol.71~Vol.78>
Vol.71:The nervous system can contribute to breast cancer progression (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)神谷厚範教授)
Vol.72:Synthetic compound provides fast screening for potential drugs (大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)加来田博貴准教授)
Vol.73:Primary intraocular lymphoma does not always spread to the central nervous system (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦教授)
Vol.74:Rising from the ashes-dead brain cells can be regenerated after traumatic injury (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授、山下徹講師)
Vol.75:More than just daily supplements-herbal medicines can treat stomach disorders (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)高原政宏医員)
Vol.76:The molecular pathogenesis of muscular dystrophy-associated cardiomyopathy (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)片野坂友紀講師)
Vol.77:Green leafy vegetables contain a compound which can fight cancer cells (大学院環境生命科学研究科(農学系)中村宜督教授)
Vol.78:Disrupting blood supply to tumors as a new strategy to treat oral cancer (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)河合穂高助教)
<参考>
・「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
・岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」
【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:[email protected]
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.79 発行
2020年03月25日