◆発表のポイント
- 岡山市内在住の2人の患者さんから海外型の薬剤耐性菌を検出しました。
- カルバペネム耐性腸内細菌科細菌に分類される多剤耐性菌で、ゲノム解析の結果、国内では検出されることが稀なNDM型の耐性遺伝子を有することが判明し、海外にルーツを持つ薬剤耐性菌であると考えられました。
- 本結果は海外型の薬剤耐性菌が市中に蔓延し始めている可能性を示唆しており、医療機関や高齢者施設等に対する注意喚起が必要と考えられます。
岡山大学学術研究院医歯薬学域の萩谷英大准教授(瀬戸内(まるがめ)総合診療医学講座)と後藤和義助教(病原細菌学分野)の研究グループは、岡山市内在住の2人より海外型の薬剤耐性菌(Antimicrobial Resistance; AMR)が検出されたことを明らかにしました。検出された薬剤耐性菌はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(Carbapenem-Resistant Enterobacterales; CRE)に分類されるもので、様々な抗菌薬に不応性を示す多剤耐性菌でした。ゲノム解析の結果、海外型CREの1つとして知られているNDM産生CREと判明し、菌株・プラスミド共に海外にルーツを持つ可能性が高いことが示唆されました。本研究結果は、8月29日、日本感染症学会・化学療法学会の英文機関誌「Journal of Infection and Chemotherapy」のオンライン版に掲載されました。
◆研究者からひとこと
NDM型CREの国内検出は、海外渡航後の方や外国人からの報告はありましたが、そういった背景の無い岡山市内在住日本人からの検出は初めてです。コロナ過にも関わらず、輸入感染症として薬剤耐性菌が国内流入しているという状況を意味していると考えています。 | 萩谷 准教授 |
黒船型(海外型)の薬剤耐性菌が岡山市内で検出されました。今回、耐性菌の発見からゲノム解析まで迅速に完了できました。これもひとえにシークエンス技術の進歩のおかげです。迅速ゲノム解析技術を岡山県の感染症対策に役立てて行きたいです。 | 後藤 助教 |
■論文情報
論 文 名:Detection of Enterobacter cloacae complex strain with a blaNDM-1-harboring plasmid from an elderly resident at a long-term care facility in Okayama, Japan
掲 載 紙:Journal of Infection and Chemotherapy
著 者:Kazuyoshi Gotoh, Hideharu Hagiya, Koji Iio, Haruto Yamada, Osamu Matsushita, Fumio Otsuka
D O I:10.1016/j.jiac.2022.08.019
U R L:https://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(22)00243-4/fulltext
<詳しい研究内容について>
岡山市内で海外型の薬剤耐性菌を検出潜在的に市中感染が拡大している可能性に注意
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域
瀬戸内(まるがめ)総合診療医学講座
准教授 萩谷 英大
岡山大学学術研究院医歯薬学域
病原細菌学分野
助教 後藤 和義