◆発表のポイント
- インドールの3位炭素原子と1位の窒素原子が結合した2量体(C3-N1’-ビスインドール)の合成は、「マイナスとマイナスを結合」させなければならず、達成困難な研究課題の一つでした。
- これまでに私たちはインドール上のメトキシ基が極性転換スイッチとして機能することを明らかとしてきました。
- 今回、1位窒素原子にメトキシ基を導入したインドール試薬とアルミニウム触媒を活用することで、通常のインドールでは合成困難なC3-N1’-ビスインドールの合成に成功しました。
- この合成法を用いることで、世界で初めて鎖状インドールの5量体の合成に成功しました。
- 今後、インドール多量体やその誘導体について生理活性や機能の探索が期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)薬品合成学分野の徳重慶祐(博士前期課程2年)、山城寿樹(博士課程4年)、同学術研究院医歯薬学域(薬)精密有機合成化学分野の阿部匠講師は、これまでに合成例の無い鎖状インドールの5量体合成に成功しました。成功の鍵は、1) 1位にメトキシ基を持つN-メトキシインドールを用いることで1位の極性転換が行えることの発見、2) 反応により生成する生成物は通常の極性に戻ること、これらを順次利用した点です。
本研究成果は、2023年3月3日、スイスの科学誌「Chemistry」に掲載されました。今後、本手法を用いた新たな機能性分子や天然物の合成が期待されます。
◆研究者からひとこと
研究室に入り本格的に研究生活が始まって早5年の歳月が経ちました。この間、病気のため大学を休学し、パンデミックが起こり、研究室を変わりました。人より多く在学していたことから様々な経験をしました。このインドール5量体には1年1年の思いが詰まっているように感じ、その合成が達成できたことを感無量に思います。このような私でも受け入れて下さり、あたたかく見守って下さった薬学部の教職員の皆様に感謝をしつつ、今後の研究に邁進していこうと思います。(徳重) | 山城院生 | 徳重院生 | 阿部講師 |
■論文情報
論文名:Aluminum-Catalyzed Cross Selective C3–N1’ Coupling Reactions of N-Methoxyindoles with Indoles
掲載誌:Chemistry
著 者:Keisuke Tokushige, Toshiki Yamashiro, Seiya Hirao, Takumi Abe
DOI:https://doi.org/10.3390/chemistry5010033
■研究資金
本研究は科学研究費補助金(22K06503)の支援を受けて実施しました。山城院生は「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ(略称:OUフェローシップ)タイプB」、並びに日本薬学会長井記念薬学研究奨励支援事業の採用者であり今後の活躍が期待されています。
<詳しい研究内容について>
世界初!極性転換スイッチを利用し、鎖状インドール5量体の合成に成功!
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域
講師 阿部 匠