旭川医科大学
岡山大学
◆ポイント
- 心負荷時に産生される活性酸素種の生理的な役割を明らかにしました。
- 心負荷時に産生される活性酸素種は心臓の収縮力を上げ、負荷下で必要な血液の拍出を維持するために必要なものであることがわかりました。
- 過剰な活性酸素種は心不全を増悪させる酸化ストレスでもありますが、生理的に必要な活性酸素種の研究が進むことで心不全病態の新たな側面の理解につながることが期待されます。
旭川医科大学生理学講座自律機能分野の入部玄太郎教授と岡山大学学術研究院医歯薬学域システム生理学の成瀬恵治教授、同・貝原恵子技術専門職員の共同研究グループは、心筋に伸展負荷を与えたときに産生される活性酸素種が負荷に対抗して心筋の収縮力を増加させる働きがあることを明らかにしました。本研究成果は4月14日にイギリスの科学雑誌「The Journal of Physiology」のオンラインサイトに掲載されました。
心臓における過剰な活性酸素種(酸化ストレス)は心不全の増悪因子として知られています。一方で微量の活性酸素種は生体に必要な生理活性物質なのですが、その心臓における役割はよくわかっていませんでした。今回の発見は、これまで心臓においては悪名高かった活性酸素種が、実は常に変動する心臓の負荷に直ちに対応して適正な血液を拍出するために必要な縁の下の力持ちであったことを示しています。
本研究成果は、心不全の酸化ストレスの成り立ちについても新たな知見を与えるものと考えられ、心不全病態の新たな側面の理解につながることが期待されます。
以下のアドレスから、論文をご覧いただけます。
研究の詳細は、2ページ以降をご覧下さい。
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/JP284283
◆研究者からひとこと
心臓研究の分野では活性酸素種はほとんどの場合悪者扱いで、あの手この手で袋叩き状態です。生物の進化上、悪いことしかしないヤツは体の中にはいないはずですので、少し活性酸素種のことを不憫に思っていました。なので、今回の活性酸素種の働きを発見したときは、普段は悪さばかりする不良生徒がバスでお年寄りに席を譲ったのを見たときのようなほっこりした気分になりました。 | 入部教授 |
■論文情報
論 文 名:Stretch-induced reactive oxygen species contribute to the Frank–Starling mechanism
掲 載 紙:The Journal of Physiology
著 者:Keiko Kaihara, Hiroaki Kai, Yumiko Chiba, Keiji Naruse, Gentaro Iribe
D O I:https://doi.org/10.1113/JP284283
U R L:https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/JP284283
■研究資金
本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤B・26282121,基盤C・21K12640,研究代表:入部玄太郎、基盤A・21H04960,研究代表:成瀬恵治、研究活動スタート支援・21K20886,若手研究・22K16125,研究代表:千葉弓子、基盤C・17K01359,20K12598,研究代表:貝原恵子)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
心負荷時に産生される活性酸素種の生理的な役割を解明!~心不全病態解明の新たな切り口~
【研究に関するお問合せ】
旭川医科大学 生理学講座(自律機能分野)
教授 入部 玄太郎(いりべ げんたろう)
TEL:0166-68-2332
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 システム生理学
教授 成瀬 恵治(なるせ けいじ)
TEL:086-235-7112
【本プレスリリースに関するお問合せ】
旭川医科大学総務課広報基金係
TEL:0166-68-2118
岡山大学総務・企画部広報課
TEL:086-251-7292