◆発表のポイント
- 国際的なインフルエンザウイルスによる死亡率の傾向を明らかにしました。
- 2001~2018年の65か国におけるインフルエンザウイルスによる死亡率を分析した結果、インフルエンザウイルスによってなくなる方は国際的に近年増加傾向にあったことを明らかにしました。
- 地理的地域や経済水準などによってもインフルエンザウイルスによる死亡率が異なる傾向が認められたことも明らかにしました。
岡山大学病院感染症内科の萩谷英大准教授と岡山大学学術研究院医歯薬学域医療教育センター薬学教育部門健康情報科学分野の小山敏広准教授は、これまで十分に明らかにされていなかった国際的なインフルエンザの死亡率の長期的な変化を明らかにしました。本研究は札幌医科大学、大阪大学、徳島大学病院などの複数の研究機関と医療機関の研究者との共同研究において実施されました。
インフルエンザウイルス感染症は気道感染症として臨床的に頻度の高い疾患ですが、その大半は対症療法または抗ウイルス薬の投与により、重篤化することは多くはありません。しかし、免疫力が低下している状態や、その他の基礎疾患を有している場合は重症化することがあり、命に関わる場合も少なくありません。
本研究では、世界保健機関から提供を受けた65か国のインフルエンザウイルス感染症死亡患者数のデータについて2001年から2018年までを分析しました。その結果、インフルエンザウイルスによる人口当たりの死亡者数は2009年ごろから世界的に増加傾向にあることが示されました。また、地理的には北米、西ヨーロッパなどで顕著に増加傾向が認められ、国や地域によってインフルエンザウイルスによる死亡率の長期的な変化について異なる傾向があることが示唆されました。本研究成果は、英国感染症協会学術雑誌「Journal of Infection」のオンライン版に6月16日に掲載されました。
◆研究者からひとこと
インフルエンザウイルス感染症はこれまでに変異を繰り返し多くの感染者・死亡者が出ています。今後の治療薬開発や予防戦略を考える上で、過去を振り返ることは非常に重要だと思います。今回のデータが、将来のインフルエンザ対策の一助になることを期待しています。 | 萩谷 准教授 |
今回の研究は多様な研究者の協力により、ヘルスケアデータサイエンスという新たな領域で国際的な医療データベースを臨床的な視点で分析した結果として得られたものと思います。今後も、国際的にインパクトのある研究成果を追及し続けていきたいと思います! | 小山 准教授 |
■論文情報
論 文 名:Global trends of seasonal influenza-associated mortality in 2001–2018: A longitudinal epidemiological study.
掲 載 紙:Journal of Infection.
著 者:Hideharu Hagiya, PhD, MD
Department of Infectious Diseases, Okayama University Hospital, Okayama 7008558, Japan
Yuka Osaki
Department of Health Data Science, Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences, Okayama University, Okayama 7008558, Japan
Michio Yamamoto, PhD
Graduate School of Human Sciences, Osaka University, Osaka 5650871, Japan
RIKEN Center for Advanced Intelligence Project, Tokyo 1030027, Japan
Takahiro Niimura, PhD
Department of Clinical Pharmacology and Therapeutics, Institute of Biomedical Sciences, Tokushima University Graduate School, Tokushima 7708503, Japan
Ko Harada, PhD, MD
Department of Medicine, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, Mount Sinai Beth Israel, New York, NY 10029, USA
Tsukasa Higashionna
Department of Pharmacy, Okayama University Hospital, Okayama 7008558, Japan
Department of Pharmaceutical Biomedicine, Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences, Okayama University, Okayama 7008558, Japan
Hirofumi Hamano, PhD
Department of Pharmacy, Okayama University Hospital, Okayama 7008558, Japan
Yoshito Zamami, PhD, Prof.
Department of Pharmacy, Okayama University Hospital, Okayama 7008558, Japan
Shiro Hinotsu, PhD, Prof.
Department of Biostatistics and Data Management, Sapporo Medical University, Hokkaido 0608556, Japan
Toshihiro Koyama, PhD∗
Department of Health Data Science, Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences, Okayama University, Okayama 7008558, Japan
Department of Pharmaceutical Biomedicine, Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences, Okayama University, Okayama 7008558, Japan
∗Corresponding author.
D O I:https://doi.org/10.1016/j.jinf.2023.06.011
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0163445323003341?via=ihub
■研究資金
研究課題:医療データサイエンスによる高齢者医療の疾病構造に関する臨床疫学研究
研究課題/領域番号:22K10415
研究種目:基盤研究(C)
研究機関:岡山大学
研究代表者:小山 敏広 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (60595106)
<詳しい研究内容について>
国際的なインフルエンザウイルスによる死亡率の長期変化を明らかに
<お問い合わせ>
岡山大学病院 感染症内科
准教授 萩谷 英大
(電話番号)086-235-7342
岡山大学学術研究院医歯薬学域
医療教育センター薬学教育部門
健康情報科学分野
准教授 小山 敏広
(電話番号)086-235-6585