国立大学法人 岡山大学

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腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が樹状細胞の突起伸長を誘導し、免疫応答を促進するメカニズムを解明!~「腸活」の普及や新たな疾患予防・治療に期待~

2023年09月07日

◆発表のポイント

  • 免疫機能が細菌やウイルスなどの異物に反応し、侵入を防いだり、攻撃しようとすることを免疫応答といいます。
  • 腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が、細胞内のヒストン脱アセチル化酵素を阻害することで、樹状細胞の樹状突起の伸長を誘導することを発見しました。
  • 短鎖脂肪酸刺激による突起伸長によって、樹状細胞が細胞外の病原体を効率よく取り込み、免疫応答が促進されることが明らかになりました。
  • 本研究成果は今後、プロバイオティクスといった有益な細菌を活用した疾患予防や、樹状細胞の機能調節を標的とした新たな疾患治療や薬の開発につながることが期待されます。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の稲本拓歩大学院生(博士前期課程2年)、学術研究院医歯薬学域の古田和幸准教授、石川一也助教、垣内力教授らの研究グループは、短鎖脂肪酸が樹状細胞の樹状突起伸長を促進することで、免疫応答を促進することを発見、そのメカニズムを解明しました。
 本研究成果は8月30日に欧州の科学雑誌「The FEBS Journal」のオンラインサイトに掲載されました。
 樹状細胞は生体に侵入した病原体などの抗原を取り込み、免疫応答を誘導する役割を持ちます。腸管粘膜の樹状細胞は、腸管管腔の抗原を取り込むため、樹状突起を伸長させることが知られていましたが、どのような因子が突起の伸長を促進するのかは完全には明らかにされていませんでした。本研究では、短鎖脂肪酸が樹状突起伸長を誘導することを発見し、さらに、短鎖脂肪酸の樹状細胞への作用機序を明らかとしました。また、短鎖脂肪酸によって刺激を受けた樹状細胞は、病原体の取り込み機能とその病原体に対する免疫応答の活性化機能が上昇することを見出しました。
 短鎖脂肪酸は腸内では腸内細菌が産生し、高濃度で存在することが知られています。本研究は腸内における樹状細胞の機能制御機構に新たな知見を与えるものと考えられます。

◆研究者からひとこと

最初は短鎖脂肪酸が樹状細胞に与える影響について総合的に評価していく予定でしたが、まさかこんなに分かりやすい、劇的な変化が現れるとは思っていなかったので非常に驚きました。今後はこの成果が、「腸活」やプロバイオティクスを用いた治療法の開発などに役立てられることを期待して研究を続けたいと考えています。実験に協力してくれた研究室メンバーや、論文作成において多大なご指導とご助言をいただいた先生方に深く感謝申し上げます。
稲本さん

■論文情報
論 文 名:Short-chain fatty acids stimulate dendrite elongation in dendritic cells by inhibiting histone deacetylase
掲 載 紙:The FEBS Journal
著  者:Takuho Inamoto, Kazuyuki Furuta*, Cheng Han, Mio Uneme, Tomonori Kano, Kazuya Ishikawa, Chikara Kaito
D O I:https://doi.org/10.1111/febs.16945
U R L:https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/febs.16945

■研究資金
 本研究は、科学研究費補助金(20K07030、23K06130、22H02869、22K19435)、武田科学振興財団などの支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が樹状細胞の突起伸長を誘導し、免疫応答を促進するメカニズムを解明!~「腸活」の普及や新たな疾患予防・治療に期待~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬学系)
准教授 古田 和幸
(電話番号)086-251-7962

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