国立大学法人 岡山大学

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いつ、死んだふりから目覚めるべきか~覚醒を早める集合フェロモンの存在を世界に先駆けて発見!~

2023年09月14日

◆発表のポイント

  • 刺激を受けると動かなくなる「死んだふり行動」は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、ダニ類、昆虫類など様々な分類群の動物で見られる行動です。ファーブルとダーウィンが昆虫の死んだふり行動に興味を持って以来、死んだふりを引き起こす刺激については、多くの研究があり、その適応的な意義についての研究も進みました。しかし、「死んだふりからいつ目覚めるべきか?」という視点には世界の誰も注目していませんでした。
  • もしいつまでも「死んだふり」をし続けると、徘徊性の捕食者に襲われる危険、嗅覚の発達した捕食者に食べられる危険が増し、さらに異性や餌にめぐり合う機会も減るため、死んだふりをずっと続けているわけにはいかず、覚醒する必要があります。
  • 今回、死んだふりのモデル昆虫であるコクヌストモドキにおいて、集合フェロモンの存在が死んだふりから覚醒する刺激のひとつであることを世界に先駆けて示しました。

 岡山大学大学院環境生命自然科学研究科の石川望都也大学院生(博士前期課程1年)と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の松村健太郎研究助教、宮竹貴久教授の研究グループは、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)という貯穀害虫を用いて死んだふり行動から覚醒する刺激について調べました。その結果、死んだふりをしている成虫を、同種の集合フェロモンの匂いにさらすことで死んだふりから覚醒するまでの時間が短くなることを新たに発見しました。
 同研究グループは、2019年にも死んだふりをしている本種の成虫を置いた地面(シャーレ)を振動させると、ある強さの振動で死んだふりを中断して、歩き出すことを世界に先駆けて発見しており(Miyatake et al. 2019)、継続的に「死んだふり」行動を研究しています。
 この研究成果は9月14日午前0時(日本時間)、Springerの日本動物行動学会誌「Journal of Ethology」にオンライン掲載されます。

◆研究者からひとこと

多くの動物や昆虫で、外部から刺激を与えると動かなくなる「死んだふり」行動が見られます。実は動物界は死んだふり行動で溢れていると言って過言ではないのですが、ダーウィンとファーブルが興味を持って以来、詳しく調べられてきませんでした。研究の題材は案外、身近なところにも転がっているものだな、と思います。
宮竹教授

■論文情報
論文名:Aggregation pheromone interrupts death feigning in the red flour beetle Tribolium castaneum
邦題名「集合フェロモンはコクヌストモドキの死んだふり行動を中断させる」

掲載誌:Journal of Ethology
著者:Motoya Ishikawa, Kentarou Matsumura, Takahisa Miyatake
DOI:10.1007/s10164-023-00793-2
U R L:https://doi.org/10.1007/s10164-023-00793-2

※先行研究(Miyatake et al. 2019)
論 文 名:Arousal from tonic immobility by vibration stimulus.
邦題名「振動刺激による死んだふりからの覚醒」

掲載誌:Behavior Genetics (国際行動遺伝学会誌 Springer)
著者: Miyatake T, Matsumura K, Kitayama R, Otsuki R, Yuhao J, Fujisawa R, Nagaya N
DOI:10.1007/s10519-019-09962-x
U R L:https://link.springer.com/article/10.1007/s10519-019-09962-x

■研究資金
本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(21H02568)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
いつ、死んだふりから目覚めるべきか~覚醒を早める集合フェロモンの存在を世界に先駆けて発見!~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)
教授 宮竹 貴久
(電話番号)086-251-8339 (FAX番号)086-251-8388

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