◆発表のポイント
- LGBTのユース(子ども・若者)は悩みを相談できる場所や機会が不足し苦しんでいる。この結果、自殺率が高まっており、緊急の対策が必要。
- LGBTユースを孤独から救うため、メタバース(仮想空間)での交流システムを構築。
- 全国のユースが、学校や家庭での悩みを共有できる革新的な取り組み。
近年、LGBTの子どもや若者が学校や家庭での悩みを打ち明けることが難しいという実態がわかってきました。2022年のLGBTユースに関する調査によれば、91.6%が保護者にカミングアウトできておらず、自分の感情や悩みを秘密にしています。さらに、48%が自殺を考えたことがあるとの報告がありました。このような事態は深刻であり、緊急の対応が求められます。しかし、カミングアウトできない多くのユースを直接支援するのは物理的な制約もあり難しいのが現状です。そこで、岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)医療情報化診療支援技術開発講座の長谷井嬢准教授(整形外科)は、メタバースを活用してLGBTユースの支援ができないかと考案し、取り組んできました。そして、一般社団法人「にじーず」との協力のもと、メタバースを利用したLGBTユース同士の交流プロジェクトが始動しました。このプロジェクトは、こども家庭庁が主催する「令和5年度NPO等と連携したこどもの居場所づくり支援モデル事業」に採択され、国庫補助事業として重要な課題であると認められました。この新しい取り組みは、孤立しているユースにとっての新たな支援の選択肢として期待されています。
◆研究者からひとこと
私は骨軟部腫瘍の専門家として、小児・若年成人に多いこの希少がんの患者たちが孤独に闘病せず、交流できる機会を増やすことを目指して、メタバースを活用した研究を進めてきました。最近、LGBTのユースたちがカミングアウトの障壁に直面し、孤独感を抱えている状況を知った際、私の取り組んでいる希少がんのプロジェクトとの共通点を感じました。そのため、医師として、この問題にどのように貢献できるかを模索し、提案を進めてきました。メタバースを活用することで、アバターを介して匿名性を保ちながら自由に意見交換ができると考えています。私の願いは、このシステムを通じて多くのユースが「居場所」を見つけ、孤独を感じずに過ごせることです。 | 長谷井准教授 |
■研究資金
本研究は、公益財団法人 橋本財団 2023年度 福祉助成と、こども家庭庁 令和5年度NPO等と連携したこどもの居場所づくり支援モデル事業国庫補助の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
LGBTの子ども・若者達を孤独から救う!~メタバースを用いた新しい交流システムの構築~
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院医歯薬学域(医)
医療情報化診療支援技術開発講座
准教授 長谷井 嬢
(電話番号)086-235-7273