岡山大学
飯塚病院
◆発表のポイント
- 厚生労働省が公開する人口動態統計・死因統計のデータから、「最期の時を過ごす場所(死亡場所)」の内訳トレンドを解析しました。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行した2019年を変化点として、「病院死が減少・在宅死が増加」しており、COVID-19が日本の終末期医療に影響した可能性が示唆されました。
- 特に高齢者や、がんや老衰での死亡が変化していることが分かり、今後の在宅・終末期ケアの在り方に関する検討の足掛かりになることが期待されます。
岡山大学病院総合内科・総合診療科の大塚勇輝助教、感染症内科の萩谷英大准教授、岡山大学学術研究院医歯薬学域医療教育センターの小山敏広准教授と、飯塚病院(福岡県飯塚市)総合診療科の柴田真志医師らでつくる研究グループは、国民が最期の時を過ごす場所が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下において変化していることを明らかにしました。これらの研究成果は2024年2月28日、米国の科学雑誌「PLOS ONE」にResearch Articleとして掲載されました。
COVID-19の流行は世界各国における医療サービスに変化を及ぼしたものの、COVID-19による直接的な影響が欧米諸国に比して小さかったといわれる日本において、その超高齢社会に間接的に与えた影響はよく分かっていませんでしたが、本研究により2019年以降、がん・老衰を死因として亡くなる高齢者のうち、病院死が減少し、在宅死が増加する傾向にあることが明らかとなりました。在宅死の増加傾向は、終末期ケアを行う臨床現場で医療者が感じる需要の変化とも合致しており、本研究結果は、人生の最終段階におけるよりよい医療を追及していく足掛かりになることが期待されます。
◆研究者からひとこと
臨床現場での気付きをビッグデータを用いて統計学的に示すことができて良かったです。超高齢社会を迎えた日本の終末期医療は世界各国のモデルになると考えており、在宅・緩和・老年医療を含む総合診療分野の領域から、よりよい医療を目指して引き続きその在り方を検討していくことができればと思っております。 | 大塚助教 |
パンデミックの陰で、COVID-19以外の終末期患者さんの過ごす場所にも多大な変化が生じていたことが明らかになりました。次なる新興感染症に備えて、この変化が好ましいものであったのか、また在宅医療や緩和ケアの質はどうだったのか、研究を進めたいと思います。 | 柴田医師 |
■論文情報
論 文 名:Changes in the place of death before and during the COVID-19 pandemic in Japan
掲 載 紙:PLOS ONE
著 者:Masashi Shibata, Yuki Otsuka, Hideharu Hagiya, Toshihiro Koyama, Hideyuki Kashiwagi,
Fumio Otsuka
D O I:10.1371/journal.pone.0299700
U R L:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0299700
<詳しい研究内容について>
最期の時を過ごす場所を厚生労働省のデータから解析~コロナ禍で病院から在宅へ死亡場所がシフト~
<お問い合わせ>
岡山大学病院 総合内科・総合診療科
助教 大塚勇輝
(電話番号)086-235-7342
(FAX)086-235-7345