国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

SGLT2阻害薬の新しい腎保護作用メカニズムを発見

2024年03月27日

◆発表のポイント

  • 細胞内の小胞体タンパク質であるGRP78が、糖尿病関連腎臓病では近位尿細管細胞から尿中に分泌され周辺の尿細管細胞に炎症を拡大することが分かり、カナグリフロジンにより抑制されました。
  • カナグリフロジンは糖尿病関連腎臓病の近位尿細管細胞の上皮間葉転換と間質線維化を抑制しました。そのメカニズムにGRP78が関わる可能性が示されました。
  • カナグリフロジンは近位尿細管細胞の糖再吸収を抑制します。細胞内糖濃度の低下により小胞体のGRP78が増加し、細胞内カルシウム濃度の調整に重要なSERCAの働きを活性化しました。また小胞体機能を向上させ、糖尿病がない人の腎臓病であっても細胞保護作用を示すことが分かりました。

 岡山大学病院 腎臓・糖尿病・内分泌内科の中司敦子講師、和田淳教授はNPO法人日本腎臓病協会Kidney Research Initiative-Japan(KRI-J)および田辺三菱製薬株式会社との共同研究において、SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンが糖尿病関連腎臓病の進行を抑制する新しい作用メカニズムを発見しました。カナグリフロジンはGPR78のタンパク量や存在する場所を変化させ、糖尿病における近位尿細管細胞の形質転換や間質線維化を抑制し、また糖尿病のない場合でも、小胞体機能を向上させ、細胞質の過剰なCa2+を小胞体に戻すポンプであるSERCAの働きを良くすることにより、細胞を保護しました。
 この成果は、2024年2月23日に米国糖尿病学会誌「Diabetes」のResearch Articleとして公開されました。

◆研究者からひとこと

 糖尿病関連腎臓病の進行に関わる要素は複数存在し、経過も様々です。SGLT2阻害薬は、血糖降下作用以外に腎臓・心臓の機能低下を予防する作用も有することが近年明らかになり診療で広く使用されるようになりました。しかし「どのようなメカニズムで効くのか」については、まだ解明されていない部分が残っています。今回はカナグリフロジンの腎臓を守る働きについて新たなメカニズムの一つを明らかにしました。今後も臨床医学や患者さんに還元できるような、基礎研究を続けていきたいと思います。研究にご協力くださいました関係者の皆様に深謝申し上げます。
中司 講師

■論文情報
文 名:GRP78 Contributes to the Beneficial Effects of SGLT2 Inhibitors on Proximal Tubular Cells in DKD (糖尿病関連腎臓病のSGLT2阻害薬の有効性は近位尿細管細胞のGRP78を介している)
掲 載 紙:Diabetes
著  者:Atsuko Nakatsuka, Satoshi Yamaguchi, Jun Wada
D O I:10.2337/db23-0581
U R L:https://diabetesjournals.org/diabetes/article-abstract/doi/10.2337/db23-0581/154287/GRP78-contributes-to-the-beneficial-effects-of?redirectedFrom=fulltext

■研究資金
 本研究は、NPO法人日本腎臓病協会・田辺三菱製薬による共同事業、また独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤研究C・23K07673,研究代表:中司敦子)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
SGLT2阻害薬の新しい腎保護作用メカニズムを発見


<お問い合わせ>
岡山大学 腎臓・糖尿病・内分泌内科
講師 中司敦子
(電話番号)086-235-7235
(FAX) 086-222-5214

年度