名古屋工業大学
広島市立大学
岡山大学
◆発表のポイント
- 黒鉛系物質における特異構造と超伝導性という新しい視点を見出した。
- 「蛍光X線ホログラフィー」を用いて黒鉛中のカルシウムとカリウムを可視化した。
- 豊富で安価な元素で高性能な超伝導物質を作りだす指針を得た。
名古屋工業大学大学院工学研究科工学専攻(物理工学領域)の林好一教授、広島市立大学大学院情報科学研究科の八方直久准教授、岡山大学異分野基礎科学研究所の久保園芳博教授らの研究グループは、原子配列を可視化できる先端計測法「蛍光X線ホログラフィー」を用いて、黒鉛に添加させたカルシウムとカリウムの原子像取得に成功しました。その結果、カルシウムとカリウム原子がランダムに混ざり合っておらず、ナノスケールで水と油のように相分離していることを発見しました。
超伝導は、整った構造を持つ結晶において発現しやすい現象とされてきました。今回の発見から、添加元素が相分離を起こした不均一結晶においても同様に高い転移温度を示すことが証明されました。エネルギー問題を解決するために、多くの研究者が室温超伝導材料の開発に取り組んでいます。本研究の結果は、超伝導転移温度を室温に近づけるための重要な一歩です。
本研究成果は、2024年4月18日にChemistry of Materialsに掲載されました。また、論文のイラストがSupplementary Cover Artsに採択されました。
■論文情報
雑誌名: Chemistry of Materials
論文タイトル:Nanophase separation in K1-xCaxC8 revealed by X-ray fluorescence holography and extended X-ray absorption fine structure
著者:N. Happo, A. Kubota, X. Yang, R. Eguchi, H. Goto, M. Ikeda, K. Kimura, Y. Takabayashi, J. R. Stellhorn, S. Hayakawa, K. Hayashi and Y. Kubozono
公表日:2024年4月18日
DOI:10.1021/acs.chemmater.3c02832
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.chemmater.3c02832
■研究資金
本研究は、日本学術振興会 科学研究費 学術変革領域研究(A)「超秩序構造が創造する物性科学」(代表者:林好一)、基盤研究(B)(代表者:久保園芳博)等の支援を受けて実施しました。(課題番号:17K05500、18K03540、18K04940、18K18736、19H02676、20H05878、20H05879、20H05881、23H05449)
JASRI/SPring-8の研究課題(2016B0128, 2017B0128)、あいちシンクロトロン光センターの研究課題(202301014)、広島大学放射光科学研究所の研究課題(22BU006)、九州シンクロトロン光研究センターの研究課題(2202003F)に支援いただきました。
<詳しい研究内容について>
1,2族金属共添加黒鉛の高い超伝導性の謎を解明―カルシウムとカリウムは水と油の関係!―
<お問い合わせ>
(研究に関すること)
名古屋工業大学大学院工学研究科工学専攻(物理工学領域)
教授 林 好一
TEL: 052-735-5308
広島市立大学 大学院情報科学研究科 情報工学専攻
准教授 八方 直久
TEL: 082-830-1553
岡山大学 異分野基礎科学研究所
教授 久保園 芳博
TEL: 086-251-7850
(広報に関すること)
名古屋工業大学 企画広報課
TEL: 052-735-5647
広島市立大学 事務局企画室企画グループ
TEL: 082-830-1666
岡山大学 総務・企画部 広報課
TEL: 086-251-7292