◆発表のポイント
- 近年、有機合成化学分野では環境に配慮したものづくりが注目されており、可視光をエネルギー源として活用したフォトレドックス触媒反応の研究において、より安定性の高い触媒の開発が求められていました。
- 今回、高い還元力を持つフェノチアジン有機フォトレドックス触媒の開発に成功しました。この触媒は、従来のフェノチアジン触媒と比較し安定性が高くリサイクルが可能です。
- 本研究で開発した触媒により、青色LEDを利用した多様なフォトレドックス触媒反応の開発が期待されます。
岡山大学異分野基礎科学研究所の田中健太助教と、同大学院自然科学研究科の安藤早春大学院生(当時)、学術研究院環境生命自然科学学域(理)の髙村浩由准教授、門田功教授らの共同研究グループは、強い還元力を持つ安定なフェノチアジン有機フォトレドックス触媒の開発に成功しました。この触媒は青色LEDを光源とした種々のフォトレドックス触媒反応に適応可能であり、これまでのフェノチアジン触媒では難しかった触媒のリサイクル化を達成しました。
本研究成果は2024年3月15日、イギリス王立化学会が発行する「Chemical Communications」にオンライン掲載されました。
今後はこの触媒を利用することにより、従来のフェノチアジン触媒では適応が難しかった多様なフォトレドックス触媒反応の開発に期待されます。
◆研究者からひとこと
新たな有機フォトレドックス触媒を開発することができました。 「合成した触媒の新規性は?」「どの有機合成反応に使える?」「ストロングポイントは?」など、論文化するにあたり一筋縄では行かないことも多かったですが、形となった今、嬉しい気持ちでいっぱいです。 今後はこの触媒を用いて、世界から注目される有機分子変換反応を開発したいと思います。 | 安藤大学院生(当時) | 田中助教 |
■論文情報
論 文 名:Strongly Reducing Helical Phenothiazines as Recyclable Organophotoredox Catalysts
掲 載 紙:Chemical Communication
著 者:Ando, Haru.; Takamura, Hiroyoshi.; Kadota, Isao.*; Tanaka, K.* (*は責任著者)
D O I:10.1039/D4CC00904E
U R L:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/cc/d4cc00904e
■研究資金
本研究は公益財団法人村田学術振興財団、公益財団法人ウエスコ学術振興財団、競輪の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
可視光をエネルギー源として活用できる!新たな有機光触媒の開発に成功~高い還元力、安定性、汎用性を持ち、リサイクル可能な有機フォトレドックス触媒~
<お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所
助教 田中 健太