肝細胞がんにおける免疫チェックポイント阻害剤治療効果予測に有用な自己抗体を同定―進行がん治療での最適な治療選択のツールに―
2024年08月06日
◆発表のポイント
- 肝細胞がんにおいて免疫チェックポイント阻害剤(1)治療を行った場合の生存予測に有用な自己抗体として抗PD-1抗体を同定しました。
- 今後も様々ながん種において適応拡大が見込まれる免疫チェックポイント阻害剤治療時の予後予測に有用である可能性があり、さらなる発展が期待されます。
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)肝・腎疾患連携推進講座の高木章乃夫特任教授らの研究グループは、肝細胞がんにおいて免疫チェックポイント阻害剤治療を行った場合の生存予測に有用な自己抗体を同定しました。近年、抗がん免疫を抑制してしまうPD-1/PD-L1を抗PD-1抗体薬や抗PD-L1抗体薬(免疫チェックポイント阻害剤)を投与することによって抑え込む治療法の適応が拡大していますが、有効な患者さんは3割程度であり、治療効果を早く知ることが治療選択を決めるうえで重要になってきています。
今回の研究では肝細胞がん患者さんの血液中に自分の免疫力により抗PD-1自己抗体が作られている可能性があるということと、その自己抗体が多いか少ないかにより免疫チェックポイント阻害剤治療後の生存率に違いがあることが明らかになりました。これらの研究成果は8月1日、米国消化器病学会が発行している雑誌「Gastro Hep Advances」のArticles in Pressとして掲載されました。
本研究成果は近年様々ながん種で適応が拡大している免疫チェックポイント阻害剤の予後予測に有用な可能性があり、肝細胞がんはもとより複数の治療法がある進行がん治療において最適な治療選択を行うための有用なツールとなることが期待されます。
◆研究者からひとこと
今まで、いろんな検体で抗PD-1抗体を測定してきました。免疫チェックポイント阻害剤治療薬を受けていない患者さん中心の検体ではあまり治療効果や予後との関係が見えてこず、「あ~また駄目かー」の日々でしたが、今回、免疫チェックポイント阻害剤使用患者さんにおいて予後予測に有用であるという結果が得られて、感激しています。他のがん種でも同様の結果が得られて、治療選択を適切にできるためのツールになるように張り切って検討していきたいと思ってます! | 高木 特任教授 |
■論文情報
論 文 名:Anti-PD-1 autoantibody predicts survival of patients with hepatocellular carcinoma receiving atezolizumab/bevacizumabastro Hep Advances
掲 載 紙:Gastro Hep Advances
著 者:Yuki Sasaki, Kazuyuki Matsumoto, Akinobu Takaki, Takuya Adachi, Masahiro Takahara, Keita Ozato, Yasuto Takeuchi, Masahiko Sue, Nozomi Miyake, Nozomu Wada, Hideki Onishi, Hidenori Shiraha, Takashi Oda, Koichiro Tsutsumi, Kazuhiro Nouso, Kazuya Kariyama, Hiroaki Hagihara, Akio Moriya, and Motoyuki Otsuka
D O I:https://doi.org/10.1016/j.gastha.2024.07.018
■研究資金
本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(若手B・20K17050,研究代表:松本和幸、基盤B・22H02828,研究代表:大塚基之、基盤C・24K11153,研究分担:大塚基之、基盤B・23K24090,研究代表:大塚基之)と日本医療研究開発機構(AMED)「肝炎等克服実用化研究事業」(JP24fk0210133 ・ JP24fk0210158・JP24fk0310506研究代表:大塚基之)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
肝細胞がんにおける免疫チェックポイント阻害剤治療効果予測に有用な自己抗体を同定―進行がん治療での最適な治療選択のツールに―
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)肝・腎疾患連携推進講座
特任教授 高木章乃夫
(電話番号)086-235-7219 (FAX)086-225-5991