ヒト臓器チップの心臓モデルを開発―心疾患に対するより効果的な治療薬の開発や個別化医療への貢献に期待―
2024年08月08日
◆発表のポイント
- ヒトの心臓の構造と機能をよりよく模擬するミニ心臓を開発しました。
- ヒト心臓チップは、心筋梗塞や心不全などの疾患に対するより有効な治療薬の開発を、動物の犠牲なしで実現可能です。
- 個人由来のヒトiPS細胞を用いることにより、薬の薬効・毒性の個人差を考慮した個別化医療実現に貢献すると期待されます。
本学学術研究院医歯薬学域(医)システム生理学の高橋賢准教授と成瀬恵治教授らは、臓器チップ技術を応用したヒトのミニ心臓モデルを開発しました。この研究成果の論文が8月8日午後6時(日本時間。英国時間:同日午前10時)に英国の国際学術誌「Scientific Reports」で一般公開されます。
臓器チップ技術は、微細な流路を持つ大きさ数センチメートルのチップ上で複数種類の細胞を共培養し、臓器の機能を再現する革新的な技術です。これまで、医薬品の薬効・毒性の評価は実験動物に依存していましたが、動物への薬効・毒性が必ずしもヒトに対して再現されないことや、動物の犠牲が問題になっていました。ヒト心臓チップの普及により、心不全や心筋梗塞のより有効な治療薬の開発、さらには薬の効果の個人差を考慮した個別化医療への貢献が期待されます。
◆研究者からひとこと
臓器チップ技術は、これまで実験動物に依存していた薬の薬効・毒性評価や疾患モデルの作成を、動物を犠牲にせずに行うことができます。これまでの製薬や医学研究の方法を根本的に変える革新的なポテンシャルを秘めています。 | 高橋 准教授 |
■論文情報
論 文 名:Human heart-on-a-chip microphysiological system comprising endothelial cells, fibroblasts, and iPSC-derived cardiomyocytes
掲 載 紙:Scientific Reports
著 者:Yun Liu, Rumaisa Kamran, Xiaoxia Han, Mengxue Wang, Qiang Li, Daoyue Lai, Keiji Naruse, Ken Takahashi
D O I:10.1038/S41598-024-68275-0
U R L:https://www.doi.org/10.1038/S41598-024-68275-0
■研究資金
本研究は日本学術振興会(JSPS)科研費20H04518および21H04960の助成を受け実施しました。
<詳しい研究内容について>
ヒト臓器チップの心臓モデルを開発―心疾患に対するより効果的な治療薬の開発や個別化医療への貢献に期待―
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 システム生理学
准教授 高橋 賢
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(FAX)086-235-7430