かずさDNA研究所
岡山大学
かずさDNA研究所は岡山大学と共同で、免疫細胞の脂質代謝を調整することで、がんの増殖を抑える機能が強化される仕組みを明らかにしました。
この数年の薬や治療法の大きな進歩により、がんは治る疾患になってきましたが、依然として日本人の3 - 4人に1人はがんで亡くなることも知られています。通常、外科的な切除や抗がん剤治療、および放射線治療などが適用されますが、新たに免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を組み合わせた治療が取り組まれています。しかし、これらの治療法には、特定の腫瘍にしか効果がないなどの限界があります。
最近の研究で、免疫細胞の一種であるTh9細胞がマウスの腫瘍に対して強い抗がん作用を持つことが明らかになりましたが、その詳細な働きについてはまだ十分に解明されていませんでした。そこで本研究では、Th9細胞の機能制御メカニズムを解明し、がん治療への応用を目指しました。その結果、Th9細胞が作り出す脂肪酸の合成を阻害することで、がん抑制効果が向上することを発見しました。また、脂肪酸合成を阻害したTh9細胞と免疫チェックポイント阻害薬を併用すると、がんがほぼ完全に消失することも確認されました。
この研究成果は、悪性黒色腫に対する新たな治療法の可能性を示しており、代謝をターゲットにした新しいがん免疫細胞療法の実現が期待されます。
研究成果は国際学術雑誌 Cellular & Molecular Immunologyにおいて、8月26日にオンライン公開されました。
■論文情報
論文タイトル: Fatty acid metabolism constrains Th9 cell differentiation and antitumor immunity via the modulation of retinoic acid receptor signaling
著者:Nakajima T, Kanno T, Ueda Y, Miyako K, Endo T, Yoshida S, Yokoyama S, Asou HK, Yamada K, Ikeda K, Togashi Y and Endo Y
掲載誌:Cellular & Molecular Immunology
DOI:10.1038/s41423-024-01209-y
■予算等
(公財)かずさDNA研究所研究補助金、JSPS 科研費(#23H04794、#20H03455、 #20K21618、#21K15476、#22K15502、#23K14552)
<詳しい研究内容について>
免疫細胞の抗腫瘍効果を強化する仕組みを発見
<お問い合わせ>
<研究に関すること>
かずさDNA研究所 先端研究開発部 オミックス医科学研究室
室長 遠藤 裕介(えんどう ゆうすけ) TEL:0438-52-3958
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 腫瘍微小環境学分野
教授 冨樫 庸介(とがし ようすけ) TEL:086-235-7390
<報道に関すること>
かずさDNA研究所 広報・教育支援グループ TEL:0438-52-3930
岡山大学総務・企画部広報課 TEL:086-251-7292