医療系学生におけるHPVワクチンの接種率・施策の認知率などを調査~性別・学年・専攻による違いと、接種・忌避の理由が明らかに~
2024年11月27日
◆発表のポイント
- 医療系学生(医学部、歯学部、薬学部)を対象に、HPVワクチン接種歴と接種予定、積極的ワクチン接種勧奨施策の認識等について、アンケート調査を実施しました。
- 女子学生の接種率は55.6%と一般集団より高く、施策の認知率も全体的に高値でした。一方で、男子学生では接種率は低値であったものの、高学年ほど施策の認知率が上昇していました。
- 接種行動には本人と親の意思が大きく関与し、他のワクチン接種や勉学・転居等による接種日程調整の困難性も挙げられ、教育啓発活動の継続と接種機会の確保が必要と考えられました。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の神辺まどか大学院生、岡山大学病院総合内科・総合診療科の大塚勇輝助教、同大学病院感染症内科の萩谷英大准教授らの研究グループは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種歴と接種予定、積極的ワクチン接種勧奨の再開への認識などについてアンケート調査を行い、一般集団に比した医療系学生の性別、学年、専攻分野ごとの差異について明らかにしました。これらの研究成果は11月5日に日本感染症学会の英文誌である「Journal of Infection and Chemotherapy」にOriginal Articleとして掲載されました。
子宮頸がんの発症を予防できるHPVワクチンは、副作用への懸念から一時積極的接種勧奨が中止されていたものの因果関係は証明されないとして勧奨・定期接種が再開され、キャッチアップ接種も促進されています。しかし依然として本邦におけるワクチン接種率は低く、これが子宮頸がん発症率の高さとの関与が示唆されています。
今まで各個人が有するHPVワクチン接種歴や認識・知識と、ワクチン接種行動に対する理由との関連性は不明でした。本研究を通じて、将来的なワクチン接種の担い手でありワクチンの有効性について発信する側ともなる医療系学生の接種・忌避の状況やその理由について明らかになったことで、今後のアウトリーチ活動と医学教育を考える契機になることが期待されます。
◆研究者からひとこと
自分自身がまさにキャッチアップ世代であり、子宮頸がんワクチンの接種方針におけるメディアの報道や政府の動向に大きく影響を受けました。今回の研究を通して対象世代の認識を知るとともに、アンケートを通して接種対象者としての接種行動を後押しし、医療従事者として適切な情報入手につながってほしいと考えております。 | 神辺大学院生 |
若者を対象にHPVワクチンについて正しい情報の発信を試みる学生団体もあるなど、医療系学生の知識・認識・行動は本邦のワクチン接種状況を改善するうえで重要な鍵になると思います。その状況や要因を調査・分析できたことはワクチン政策や現場での配慮について考える一助になりそうです。 | 大塚 助教 |
子宮頸がんワクチンの公費助成制度は2025年3月末で終了予定となっています。若い女性のがんを少しでも減らすために、一人でも多くの方にワクチン接種を受けていただきたいと思います。 | 萩谷 准教授 |
■論文情報
論 文 名:Human Papillomavirus Vaccination Awareness and Uptake among Healthcare Students in Japan
掲 載 紙:Journal of Infection and Chemotherapy
著 者:Madoka Shimbe, Yuki Otsuka, Hideharu Hagiya, Yoichi Yamada, Fumio Otsuka
D O I:https://doi.org/10.1016/j.jiac.2024.11.004
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1341321X24003015
<詳しい研究内容について>
医療系学生におけるHPVワクチンの接種率・施策の認知率などを調査~性別・学年・専攻による違いと、接種・忌避の理由が明らかに~
<お問い合わせ>
岡山大学病院 総合内科・総合診療科
助教 大塚勇輝
岡山大学病院 感染症内科
准教授 萩谷英大
(電話番号)086-235-7342 (FAX)086-235-7345