国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

亜鉛の行き先を決める遺伝子を発見

2013年05月08日

 亜鉛は動植物の健全な成長に必要不可欠な金属です。我々は亜鉛を活発な成長組織や生殖器官へ優先的に輸送するために必要なイネの遺伝子OsHMA2を世界で初めて同定しました。本研究成果は2013年4月10日、米国の植物のトップジャーナル『Plant Physiology』オンライン版に公開されました。
 現在、土壌の亜鉛欠乏や人間の亜鉛栄養不足は作物の生産性や人間の健康にとって世界的に深刻な問題となっています。今後この遺伝子を利用すれば、植物体内の亜鉛の効率的利用、亜鉛リッチな作物の作出に寄与できます。またコメのカドミウムの低減にも繋がります。
<業 績>
 亜鉛は植物や動物にとって重要な金属です。亜鉛が不足となると、植物は成長が止まります。また我々も亜鉛不足に陥ると、味覚障害や成長停止が起こります。
 植物の場合、特に細胞分裂や細胞伸長が活発な組織(例えば新しい葉、穂)がより多くの亜鉛を要求します。しかし、長い間植物がどのように多くの亜鉛をこれらの組織に優先的に届けるのか、明らかではありませんでした。
 今回、我々はイネの節で発現するOsHMA2という遺伝子が土壌から吸収された亜鉛を優先的に新しい葉や穂へ分配することに関与していることを発見しました。この遺伝子を破壊すると、新しい葉や穂への亜鉛の分配が滞り、新しい葉の成長停止、コメ収量の低下を引き起こします。
 またこの遺伝子は有毒金属カドミウムの分配にも関与することを突き止めました。

<見込まれる成果>
 土壌の亜鉛欠乏は世界的な問題で、作物の生育に深刻な影響を与えています。また人間の亜鉛栄養不足は鉄不足に次ぐ問題で、亜鉛を多く含む食品の開発が期待されています。本研究で同定した遺伝子OsHMA2を改変すれば、少ない亜鉛をより効率的に伸長組織へ輸送することで、作物の生産性に貢献できる可能性があります。また穂への優先的な配分を増やせば、亜鉛リッチ米の作出にも繋がります。
 一方、カドミウムはイタイイタイ病を引き起こす重金属ですが、本研究では、OsHMA2が種子へのカドミウムの配分にも関与していることが分かりました。OsHMA2の輸送金属選択性を改変すれば、コメへのカドミウムの蓄積を低減できる可能性があります。

<補 足>
 亜鉛はサプリメントとして販売されるほど、人間には重要かつ不足しがちな金属です。我々が摂取する亜鉛は作物を介して土から吸収されたものですが、世界的に亜鉛不足の土壌が広く分布しています。いかに少ない亜鉛を必要な組織 (細胞分裂や伸長が活発なところ)に配分するのか、植物にとって非常に大事なことです。この分配のコントロールはイネの場合、節で行っています。今回は世界で初めて節で発現する遺伝子OsHMA2が亜鉛の行き先を決めていることを発見しました。

 本研究は文部科学省新学術領域研究「植物環境突破力」、科研費基盤A、若手A及び農水省新農業展開の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所 教授
(氏名)馬 建鋒
(電話番号)086-434-1209
(FAX番号)086-434-1209

年度