国立大学法人 岡山大学

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日中の無意識のかみしめが歯の喪失に

2014年08月26日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)咬合・有床義歯補綴学分野の川上滋央助教、皆木省吾教授らの研究グループが、日中の特定の無意識かみしめが歯の喪失と歯並びの崩壊に関わっていることを世界で初めて突き止めました。
 本研究成果は、2014年7月14日にアメリカのオンライン科学雑誌『PLoS One』に掲載されました。
 これまで夜間の歯ぎしりが歯の寿命に関係することは想像されていましたが、昼間の咬みしめについては、未だに明らかになっていませんでした。今回、研究グループでは、高精度の筋電計を用いて、昼夜を通じて咬筋(かみしめる筋肉)の働きを解析した結果、昼間の特殊な咬みしめが歯の喪失とその後の入れ歯の不調に深く関与していることを明らかにしました。
 この研究によって、入れ歯や顎関節症の治療が大きく進歩すると考えられています。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)咬合・有床義歯補綴学分野の川上滋央助教、熊崎洋平歯科医師、萬田陽介歯科医師、沖和広助教、皆木省吾教授らの研究グループが、日中の無意識かみしめのうちでも1~2Hzの周期的収縮(中程度の力で「グッグッグッ」と周期的に力を入れているもの)が、歯の喪失と歯並びの崩壊に深く関わることを突き止めました。このかみしめは無意識に行っていることが多く、自身ではかみしめていることに気がついていない人がほとんどです。
 過去には、睡眠中に歯ぎしり(ブラキシズム)*1をしている人は歯のすり減りが強いと信じられていました。しかし、今回の研究によって歯を喪失し,さらに入れ歯に不具合のある人では,睡眠中よりも昼間の無意識のかみしめが非常に多く認められることが明らかになりました。しかもその中でも特定のかみしめパターンが、歯の喪失と高い感度*2と特異度*3をもって関連づけられることが示されたことは、これからの予防歯科学に大きな影響を及ぼすと考えられます(図1)。

図1. 歯の喪失が進行し、さらに義歯の不具合を生じているすれ違い咬合群では、年齢適合対照群や若年対照群と比較すると1時間あたりのかみしめ発生回数が多いことがわかる

<見込まれる成果>
 歯を失う主な原因として、むし歯と歯周病があります。そのため、歯科では、むし歯治療と歯周病治療に重点が置かれてきました。しかし、それらの治療を受けていても、歯を次々と失ってしまい、入れ歯になっても痛みが続く場合があります。このような歯の喪失に、日中の無意識のかみしめが関与していることがわかりました。この発見は、むし歯や歯周病以外の歯を失う大きな原因に近づくことになり、予防や治療に大きな影響を与えることになると考えられます。


<補 足>*1歯ぎしり(ブラキシズム):咀嚼筋群が何らかの理由で異常に緊張し、咀嚼・嚥下・発音などの機能的な運動と関係なく、非機能的に上下顎の歯を無意識にこすり合わせたり、くいしばったり、連続的にカチカチとかみあわせる習癖のこと。*2感度:医学における感度とは、臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率」として定義される値である。<出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/感度>*3特異度:特異度(とくいど)とは、臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陰性のものを正しく陰性と判定する確率」として定義される値である。<出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/特異度>
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(24390433)の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Kawakami S、 Kumazaki Y、 Manda Y、 Oki K、 Minagi S. Specific Diuranal EMG Activity Pattern Observed in Occlusal Collapse Patients: Relationship between Diurnal Bruxism and Tooth Loss Progression. PLoS One、 2014、 9(7)、 e101882; (doi: 10.1371/journal.pone.0101882)
報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
咬合・有床義歯補綴学分野 助教 川上滋央
(電話番号)086-235-6687
(FAX番号)086-235-6689
(URL)//www.okayama-u.ac.jp/user/hos/kamiawase.html

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