ナノキャリア融合BMP4による骨形成促進に初めて成功
2013年05月27日
本学大学院医歯薬学総合研究科の松川昭博教授、尾﨑敏文教授の研究グループは、進化分化工学的手法で作成したコラーゲン結合能を有する骨形成因子BMP4を用いて、担体なしで限局した部位に骨形成を誘導することに初めて成功しました。本研究成果は2013年4月9日、『Nanomedicine』(2013;8:1349-60)電子版に掲載されました。
骨腫瘍や外傷により生じた骨欠損や癒合不全の治療は、おもに患者の腸骨から骨を採取して移植する自家骨移植が行われます。しかし、採取できる骨量や形状、採骨部の痛みや骨折、神経損傷など様々な弊害が問題になっています。コラーゲン結合能を有する融合BMP4により、必要な場所に骨成長因子を長期間留めることが可能となり、自家骨採取によらない治療法への展開が期待されます。
<業 績>骨腫瘍や外傷により生じた骨欠損や癒合不全の治療は、おもに患者の腸骨から骨を採取して移植する自家骨移植が行われます。しかし、採取できる骨量や形状、採骨部の痛みや骨折、神経損傷など様々な弊害が問題になっています。コラーゲン結合能を有する融合BMP4により、必要な場所に骨成長因子を長期間留めることが可能となり、自家骨採取によらない治療法への展開が期待されます。
岡山大学、理化学研究所(和光市)の共同研究グループ11名は、進化工学的手法でコラーゲン結合部位(CBD)と融合したBone Morphogenetic Protein (BMP)4を作成し(CBD-BMP4)、in vivoで投与部位に長くBMP4を留まらせて骨形成を促進することに成功しました。
米国では2つのBMP(BMP2とBMP7/OP1)がFDAに認証され、整形外科領域では特に前者の臨床応用が進んでいます。しかし、BMP2を局所に留めることができないため、異所性骨化の問題が報告されています。研究グループは、通常のBMP4は投与後3日間で局所から消失するものの、コラーゲン結合能をもつCBD-BMP4は投与部位に2週間も留まることを証明しました。通常、BMPはコラーゲンスポンジに染み込ませて投与されます。研究グループは、マウス骨髄内および頭蓋骨欠損部にCBD-BMP4を単独投与することで、BMP4と比較して骨形成遺伝子群の発現増強により有意な骨形成を誘導することに成功しました。本研究は、コラーゲンスポンジなど足場なしに融合タンパクのみで骨形成を誘導できることを初めて示した点で高く評価できます。
<見込まれる成果>
骨形成因子による治療効果をあげるには、局所に長く留めて拡散を防ぐことが大切です。研究グループは、骨組織の主成分はコラーゲンであることに着目し、コラーゲン結合活性を有するCBDとBMP4の融合タンパクを用いています。この手法により、これまでない低用量のBMP4(≈ 2 pM)の単回投与で骨誘導に成功しています。従来、BMP4の投与では2.5〜5μgをコラーゲンスポンジとともに投与していました。CBD-BMP4は低用量で骨欠損、癒合不全などの治療に有効となる可能性が期待されます。
<補 足>
骨形成因子(BMP)は骨格形成、骨折治癒などのあらゆる生理的骨形成に必須の役割を担う骨形成を誘導するサイトカインで、米国、欧州で臨床応用されています。しかし、その強い骨誘導能のため、異所性骨化が問題になっています。また、安価で大量生産不可能なことからとても高額な治療になります。BMPを投与部位に長く留めて効果を持続させることは、異所性骨化の予防、医療費の抑制に繋がります。
本研究は日本学術振興会(JSPS)科研費基盤研究(C)(23592187)、研究スタート支援(24890131)、基盤研究(S)(22220009) の助成を受け実施しました。
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岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
(氏名) 松川昭博
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