瀬戸内初 鹿田遺跡で最古の「猿駒曳(さるこまひき)」と「牛」の絵馬が出土
2013年05月29日
岡山市鹿田遺跡で奈良時代末(8世紀後半)の井戸から2枚の絵馬が出土しました。絵馬は井戸にいれられた井筒の中からみつかりました。それぞれの絵馬には馬と牛が一頭ずつ描かれています。馬には鞍や鐙などの表現があり、馬を曳く猿の姿も確認されました。牛は背中に荷物を背負った姿が描かれています。井戸からは他に赤く塗られた土師器の器などが出土しています。
この時期の馬を曳く猿が描かれている絵馬は国内で初めてみつかりました。また牛が描かれた絵馬は国内最古のものです。奈良時代のものとしては瀬戸内で初めての発見です。
当時の人々の信仰の姿や動物に対する考え方を知るための貴重な発見となりました。
岡山大学埋蔵文化財調査研究センターは平成24年11月~平成25年4月に鹿田キャンパスで発掘調査を行いました。その調査で奈良時代末(8世紀後半)の井戸から2枚の絵馬が出土しました。絵馬にはそれぞれ馬と牛が一頭ずつ描かれています。奈良時代の絵馬は都があった近畿地方から東に集中していますが、そのほとんどが馬を1匹描くものです。しかし今回みつかった馬の絵馬には猿が手綱を曳く姿が描かれており、この時期のものとしては国内で初めて発見されました。また牛が描かれた絵馬は可能性のあるものを含めて3点出土していますが、今回のものは牛の絵馬の中で最古のものです。さらに奈良時代のものとしては瀬戸内で初めてみつかったものとしても注目されます。この時期の馬を曳く猿が描かれている絵馬は国内で初めてみつかりました。また牛が描かれた絵馬は国内最古のものです。奈良時代のものとしては瀬戸内で初めての発見です。
当時の人々の信仰の姿や動物に対する考え方を知るための貴重な発見となりました。
絵馬が出土した井戸は2mを超える大きさに掘られており、中心に約0.8mの木を刳りぬいた井筒がいれられていました。絵馬は井筒の中央で2枚が水平に重ねられた状態で出土しました。そのそばからは完全な形の赤く塗られた土師器の器が正位置で置かれており、あわせて井戸を埋める際の祭祀的な行為があったと思われます。
馬の絵馬は23㎝×12㎝の長方形で、上部に1ヵ所穴が開けられています。馬は本来墨で描かれていますが、現状では失われています。しかし墨の部分だけは表面が保存され、周囲より少し浮き出した状態になり、馬の輪郭や各部の表現を確認することができました。馬は体を左向きにし、頭から尻尾まで体のラインが非常になめらかに描かれています。背中には鞍(くら)が載せられており、体の側面には鐙(あぶみ)などの装具も表現されています。注目されるのは馬の口元から下に延びる手綱があり、その先に手綱を曳く猿が描かれている点です。古くから猿は馬を守る動物と考えられており、今回の発見で馬と猿の関係が奈良時代までさかのぼる可能性がでてきました。
牛の絵馬は21.5㎝×12.3㎝の長方形で、こちらも上部に穴が1か所開けられています。牛は墨で描かれています。体は左向きで、体の特徴を細分までよくみることができます。体には都の牛車を曳く牛のような飾り帯が赤い彩色で表現されていることが目を引きます。今後は科学的な分析によりさらに絵馬の構図を鮮明にしていきたいです。
絵馬は古くから現在に至るまで神社などに奉納され、平安時代の絵巻にもその風景が描かれています。今回発見された資料から奈良時代の人々の願いや信仰、習俗について研究を深めていくことが期待されます。
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岡山大学埋蔵文化財調査研究センター 助教
(氏名)南 健太郎
(電話番号)086-251-7290