双子葉植物がリンを若い葉や種子に優先的に分配する仕組みを解明
2019年11月22日
◆発表のポイント
- 植物は土壌から吸収したミネラルを各器官の必要に応じて分配しますが、その仕組みは双子葉植物と単子葉植物で異なることがわかりました。
- シロイヌナズナのリン酸輸送体AtSPDTは主に維管束形成層に発現し、維管束に沿ってリンを導管から篩管へと徐々に移し替えることで発達中の器官へとリンを優先的に分配します。
- 双子葉植物のミネラル分配機構の理解を深めることで、ミネラルの過不足が生じる不良土壌での植物の生育の改善や、作物の可食部の栄養価の向上などに応用できます。
岡山大学資源植物科学研究所の馬建鋒教授らの研究グループは、モデル双子葉植物シロイヌナズナのリンの分配を司る遺伝子を世界で初めて突き止め、根から吸収したリンを若い葉や種子に優先的に分配するメカニズムを解明しました。本研究成果は10月10日、植物科学のトップジャーナル「Molecular Plant」にOnlineで公開されました。
植物は土壌から吸収したミネラルを各器官の必要に応じて分配し生育します。イネなどの単子葉植物では主に節の発達した維管束構造において維管束間輸送によってこの分配が行われます。節の維管束が発達しない双子葉植物では、本研究で見出したリンの分配を担う輸送体AtSPDTは、節だけでなく茎葉基部や葉柄などの維管束形成層に発現し、根から葉へとリンが運ばれる過程で維管束に沿って徐々に導管から篩管へとリンを乗せ換え、発達中の器官へと行き先を変えていることがわかりました。本研究成果により、双子葉植物と単子葉植物がそれぞれの体制に応じた異なる栄養素の分配メカニズムを備えており、双子葉植物では維管束形成層が栄養素の分配にも機能していることが初めて示されました。これにより、双子葉植物のミネラル分配機構の理解を深めることができ、ミネラルの過不足が生じる不良土壌での植物の生育の改善や、作物の可食部の栄養価の向上などへの応用が期待されます。
◆研究者からのひとこと
長い間植物の根によって吸収された栄養素がどのように各器官の必要量に応じて分配されるのかについて不明でした。近年、我々はイネ科植物の場合、節でミネラル栄養分の分配を行っていることを世界で初めて明らかにしてきました。今回はリン酸輸送体AtSPDTの解析を通じて、双子葉植物におけるミネラル栄養分の分配の仕組みがイネ科植物のとは異なることを突き止めました。 | 馬教授 |
■論文情報論 文 名:Vascular cambium-localized AtSPDT mediates Xylem-Phloem transfer of phosphorus for its preferential distribution in Arabidopsis.掲 載 紙:Molecular Plant著 者:Guangda Ding, Gui Jie Lei, Naoki Yamaji, Kengo Yokosho, Namiki Mitani-Ueno, Sheng Huang and Jian Feng MaD O I:doi.org/10.1016/j.molp.2019.10.002U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1674205219303260?via=ihub
<詳しい研究内容について>
双子葉植物がリンを若い葉や種子に優先的に分配する仕組みを解明
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岡山大学資源植物科学研究所
教授 馬 建鋒
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