◆発表のポイント
- 肝臓がんは死亡率が高く、その治療方法の研究を進展させるため、がんの発生と成長段階を解析できるような“新しい肝臓がんモデル”の作成が望まれていました。
- マウスのiPS 細胞をがん幹細胞へ誘導、変化させ、これを利用して肝臓がんモデルの作成に成功しました。遺伝子の変異や挿入欠失などを行わずに肝臓がんを人為的に作成したのは世界初です。
- 正常な状態からがん幹細胞の発生、肝臓がんの形成における分子メカニズムの研究に大いに貢献することが期待されます。
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科ナノバイオシステム分子設計学研究室の妹尾昌治教授、サイード・モハマド・アブデルサブール・アフィフィ博士(研究当時:大学院自然科学研究科博士後期課程、現大学院ヘルスシステム統合科学研究科外国人客員研究員)の研究グループは、炎症性物質を複数分泌しているヒトの肝細胞がんに由来する細胞株の培養上清を用いて、マウスのiPS 細胞を培養してiPS細胞をがん幹細胞へ誘導、変化させ、このがん幹細胞をヌードマウスの肝臓に移植して肝臓がんモデルを作成することに成功しました。これら一連の研究成果は、従来の遺伝子の変異や挿入欠失などの操作を行わずに臓器に特異的ながん(腫瘍)を人為的に作り出したもので、肝臓がんでは世界で初めての成功です。本研究成果は3月17日、がん研究の国際科学雑誌「British Journal of Cancer」3月17日号に公開掲載されました。
◆研究者からのひとこと
私たちのがん幹細胞研究は、逆転の発想から生まれた、世界でも非常にユニークな研究です。今までに無い新しい研究成果を継続してあげるための共同研究を歓迎します! | 妹尾教授(左)、アフィフィ博士 |
■論文情報論 文 名:A Novel Model of Liver Cancer Stem Cells Developed from Induced Pluripotent Stem Cells掲載紙:British Journal of Cancer著 者:Said M Afify, Anna Sanchez Calle, Ghmkin Hassan, Kazuki Kumon, Hend M Nawara, Maram H Zahra, Hager M Mansour, Apriliana Cahya Khayrani, Md Jahangir Alam, Juan Du, Akimasa Seno, Yoshiaki Iwasaki, Masaharu SenoD O I:10.1038/s41416-020-0792-zU R L:https://www.nature.com/bjc/
<詳しい研究内容について>
iPS細胞から“肝臓がんモデル”の作成に世界初の成功
~肝臓がん研究や治療薬開発へ応用期待~
<お問い合わせ>
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科
教授 妹尾昌治
(電話番号)086-251-8216