肺がんの原因に大気汚染を加える必要性を提言
2013年07月25日
ヨーロッパの研究者らがヨーロッパ地域で行った大気汚染と肺がんに関する大規模研究の成果が、イギリスの『Lancet Oncology』誌に7月9日、発表されたことを受け、岡山大学大学院環境生命科学研究科の頼藤貴志准教授らの共同研究グループは、同誌に招待コメンタリーを発表しました。その中では、当該研究の意義、肺がんの要因として大気汚染を加えるべきという提言、大気汚染の公衆衛生上の意義、今後の展望などを議論しています。
大気汚染物質、特に最近ではPM2.5(微小粒子状物質)を始めとする粒子状物質の健康影響が注目を集めていますが、日本よりも低い基準を掲げるWHOの基準値以下でも当該論文で影響が見られることより、国内での大気汚染濃度減少と、それにつながる政策の必要性を訴えているコメンタリーです。
<業 績> 大気汚染物質、特に最近ではPM2.5(微小粒子状物質)を始めとする粒子状物質の健康影響が注目を集めていますが、日本よりも低い基準を掲げるWHOの基準値以下でも当該論文で影響が見られることより、国内での大気汚染濃度減少と、それにつながる政策の必要性を訴えているコメンタリーです。
岡山大学大学院環境生命科学研究科の頼藤貴志准教授、広島大学大学院医歯薬保健学研究科の鹿嶋小緒里助教の共同研究グループは、イギリスの『Lancet Oncology』誌に、ヨーロッパ地域において行われた大気汚染と肺がんに関する大規模研究が発表されたことを受け、同誌に招待コメンタリーを発表しました。その中では、当該研究の意義、肺がんの1要因として大気汚染を加えるべきという提言、大気汚染の公衆衛生上の意義、今後の展望などを議論しています。
大気汚染物質、特に最近ではPM2.5(微小粒子状物質)を始めとする粒子状物質の健康影響が全国的に注目を集めています。粒子状物質とは、液状・ガス状成分からなる混合粒子であり、国内ではSPM(浮遊粒子状物質)やPM2.5(空気力学径2.5μm以下の粒子状物質)として測定されています。頼藤准教授らの研究グループは、以前より大気汚染の健康影響を評価する研究を続けています(2013年4月24日毎日新聞夕刊)。まず、「大気汚染のHealth Impact Assessment(健康影響評価)」と題し、大気汚染のガイドラインを設置し遵守した場合、大気汚染改善により東京都だけで年間どれぐらいの余剰死亡が防げるかの推測を行い、紙面でも報告されています(2005年9月15日毎日新聞、2006年4月17日毎日新聞夕刊)。更に、大気汚染の政策評価として、東京都が行っているディーゼル車運行規制が、いかに東京都の健康へ好影響を与えたのかを検討し、脳血管死亡が低下したことも報告しています(2012年6月26日朝日新聞)。その他、日本でも大気汚染に慢性的にさらされることにより、肺がんや脳梗塞など循環器系疾患が増加することをアジアで初めて証明しています。また、大気汚染の急性の影響で脳梗塞などの循環器系疾患や肺炎などの呼吸器系疾患が増加すること(2013年3月24日山陽新聞)、大気汚染の影響により早産(児が予定よりも早く出生すること)が増加することなども報告しており(2010年12月1日Reuters)、世界の大気汚染研究を牽引しております。
今回、ヨーロッパの研究者が、ヨーロッパ全土17地域で行った大規模な研究で、大気汚染と肺がんの関連が明瞭に、またWHO(世界保健機構)が掲げる基準値(PM2.5 10µg/m3)よりも低い濃度でも影響が見られることを示しました。この大規模な研究に、招待コメンタリーを求められた頼藤准教授らは、喫煙などが有名な肺がんの原因の一つに、現在の濃度レベルでも大気汚染を加えるべきではないかと提言しました。また、WHOの推測によると、年間120万人の死亡が大気汚染で引き起こされ、肺がん死亡の8%が大気汚染により引き起こされていると推測されていることを紹介し、現在の大気汚染レベルにおいてさえ、更なる大気汚染濃度減少により公衆衛生の向上が期待されることを訴えています。
<見込まれる成果>
大気汚染物質、特に最近ではPM2.5(微小粒子状物質)を始めとする粒子状物質の健康影響が注目を集めていますが、日本(PM2.5 15µg/m 3)よりも低い基準を掲げるWHOの基準値(PM2.5 10µg/m3)以下でも影響が見られることより、国内での大気汚染濃度減少と、それにつながる政策の必要性を訴えている招待コメンタリーです。
発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Yorifuji T, Kashima S. Air pollution: another cause of lung cancer. Lancet Oncology. 2013 Jul 9. pii: S1470-2045(13)70302-4. doi: 10.1016/S1470-2045(13)70302-4.
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