岡山大学
香川大学
◆発表のポイント
- 鹿やカブトムシの角など、メスをめぐって戦うために武器を発達させる動物は多く存在し、武器サイズの大きなオスが戦いに有利となりますが、大きな武器を持つことは生存にとってコストでもあり、死亡率が高いこともあります。
- オスのみが大きな大顎を発達させた甲虫であるオオツノコクヌストモドキを用いて、天敵から襲われても生き残るための「死んだふり」戦術と大顎のサイズの関係を調べたところ、大顎サイズが大きなオスほど死んだふりをよく行うことが明らかになりました。
- 闘争に使われる武器と捕食回避行動の関係について明らかにした世界初の研究となります。
香川大学農学部の松村健太郎研究員、岡山大学大学院環境生命科学研究科の宮竹貴久教授および岡山大学農学部生(弓瀬滉太さん(4年)、藤井結さん(3年)、林冬馬さん(3年))は、オオツノコクヌストモドキ(Gnathocerus cornutus)という昆虫を用いて、天敵に襲われたときに示す「死んだふり行動」を調べました。この虫のオスは、クワガタムシのように発達した大顎を持ち、この大顎を用いてメスとの交尾を巡ってオス同士が戦うことが知られています。オスの大顎サイズと死んだふり行動の関係を調査した結果、大顎サイズが大きなオスほど、死んだふり行動をより高頻度に行うことが明らかになりました。この研究結果は、12月23日グリニッジ標準時0:01(日本時間9:01)、英国王立協会の国際雑誌「Biology Letters」のResearch Articleとして掲載されました。
武器形質の進化における闘争への影響については、これまでに数多くの研究が行われてきましたが、オスの武器サイズと捕食回避行動の関係について明らかにしたのは、本研究が世界で初めてとなります。
◆研究者からのひとこと
子どものころカブトムシやクワガタムシを戦わせて遊んだことはあるでしょうか? クワガタムシやカブトムシを使って多くの実験を行うのは、広いスペースと長い時間が必要ですが、クワガタムシを小型にしたようなオオツノコクヌストモドキは、小麦粉だけで容易に飼えることから世界でまだ誰も明らかにしていない研究課題への挑戦が可能です。学生や研究員が生物の行動をワクワクした気持ちを持って調べるのを見守るのは楽しいですね。 | 宮竹教授 |
■論文情報論 文 名:Anti-predator behaviour depends on male weapon size
邦題名「対捕食者行動はオスの武器サイズに依存する」
掲 載 紙:Biology Letters著 者:Kentarou Matsumura, Kota Yumise, Yui Fujii, Toma Hayashi, Takahisa MiyatakeU R L:https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2020.0601
<詳しい研究内容について>
大きな大顎を持つオスは死んだふりをしやすい?甲虫を用いた検証により世界で初めて明らかに
<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
教授 宮竹 貴久
(電話番号)086-251-8339
(FAX番号)086-251-8388
香川大学農学部
特別研究員 松村 健太郎
(電話番号)080-1796-8803