◆発表のポイント
- 免疫に働くToll受容体がコオロギの脚再生を促進することを発見しました。
- Toll受容体の発現の低下やToll受容体を発現する免疫細胞の減少により、コオロギの脚の再生が阻害されました。
- Toll受容体の機能を解析することは、ヒトの器官再生の可能性につながると期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の板東哲哉講師、大内淑代教授、徳島大学の野地澄晴教授(現 徳島大学 学長)、京都大学の阿形清和教授(現 基礎生物学研究所 所長)らの研究グループは、再生モデル昆虫フタホシコオロギの脚の再生において、再生の初期に働く因子を探索。感染性の細菌やカビ、傷ついて死んだ細胞などを認識するToll受容体が再生を促進することを発見しました。
本研究成果は11月9日、英国の発生生物学雑誌『Development』に掲載されました。
コオロギなどの昆虫や小型魚類、両生類などは高い再生能力を持っており、付属肢などの器官を完全に再生することができます。これまでにも再生と免疫の関連は報告されていましたが、Toll受容体を介した再生の促進メカニズムは未解明でした。本研究により、再生において最も重要なステップである再生芽の形成と再生芽細胞の増殖を免疫の観点から解析することが可能となり、再生能の低いヒトの再生医療への応用につながると期待されます。
◆研究者からのひとこと
医学部医学科の研究体験型講義『医学研究インターンシップ』から始まった研究です。医学科学生の奥村美紗さん、坂東優希さん、萩原万瀧さんが精力的に研究を行いました。論文の追加実験が膨大で大変でしたが、コオロギクッキーやコオロギせんべいを食べながら頑張りました! | 板東哲哉講師と奥村美紗大学院生 |
■論文情報
論 文 名:Toll signalling promotes blastema cell proliferation during cricket leg regeneration via insect macrophages(Toll受容体シグナル経路は、昆虫マクロファージを介して、コオロギの脚再生において再生芽細胞の増殖を制御する)
掲 載 紙:Development
著 者:Tetsuya Bando, Misa Okumura, Yuki Bando, Marou Hagiwara, Yoshimasa Hamada, Yoshiyasu Ishimaru, Taro Mito, Eri Kawaguchi, Takeshi Inoue, Kiyokazu Agata, Sumihare Noji, Hideyo Ohuchi
D O I:10.1242/dev.199916
<詳しい研究内容について>
免疫に働くToll受容体がコオロギの再生を促進するメカニズムを解明
<お問い合わせ>
大学院医歯薬学総合研究科 細胞組織学
講師 板東 哲哉
(電話番号)086-235-7081