イネのカドミウム集積を抑制する遺伝子の同定により、収量と食味に影響しない低カドミウム集積イネの育成に成功!
2022年08月19日
◆発表のポイント
- カドミウムはイタイイタイ病などを引き起こす有毒の重金属であり、我々が摂取するカドミウムの半分近くはコメから由来します。本研究では、イネのカドミウム集積を抑制する遺伝子を同定しました。
- イネのカドミウム集積の品種間差を利用して、カドミウム低集積品種ではOsNramp5という遺伝子が重複して、発現が2倍になっていることを突き止めました。
- この重複遺伝子を繰り返し交配でコシヒカリに導入した結果、収量と食味に影響せず、カドミウム集積が大きく低下したイネができました。
岡山大学資源植物科学研究所の馬建鋒教授らのグループは、イネのカドミウム低集積の分子機構を解明し、カドミウム低集積イネの育成に成功しました。本研究成果はロンドン時間8月18日16:00(日本時間19日0:00)、世界のトップジャーナル「Nature Food」にOnlineにて公開されます。
カドミウムはイタイイタイ病などを引き起こす有毒の重金属です。現在でも都市化や工業化によって世界の多くの土壌がカドミウムに汚染され、基準値を超える作物が生産されて、我々の健康を脅かしています。また、我々が摂取するカドミウムの半分近くはコメに由来します。
本研究では、イネのカドミウム集積の品種間差を利用して原因遺伝子の単離を行ったところ、インドで3千年前から栽培されている在来品種のカドミウム低集積性は、根で発現するカドミウム/マンガン輸送体遺伝子OsNramp5が重複していることに起因することを突き止めました。また繰り返し交配でこの遺伝子をコシヒカリに導入したところ、収量と食味には影響せず、カドミウム集積が大きく低下したイネができました。
◆研究者からひとこと
この研究には10年以上の月日がかかり、最近になってやっとイネのカドミウム低集積メカニズムの謎を解くことができ、大変うれしく思います。多くの共同研究者のご協力に感謝し、この発見が今後カドミウムの少ない安全なイネ品種の育種に役立つことを心待ちにしております。 | 馬 教授 |
■論文情報
論 文 名:Duplication of a manganese/cadmium transporter gene reduces cadmium accumulation in rice grain
掲 載 紙:Nature Food
著 者:En Yu, Wenguang Wang, Naoki Yamaji, Shuichi Fukuoka, Jing Che, Daisei Ueno, Tsuyu Ando, Fenglin Deng, Kiyosumi Hori, Masahiro Yano, Ren Fang Shen and Jian Feng Ma
D O I:10.1038/s43016-022-00569-w
U R L:https://www.nature.com/articles/s43016-022-00569-w
■研究資金
本研究は日本学術振興会科学研究費補助金の特別推進研究及び基盤研究Sの助成を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
イネのカドミウム集積を抑制する遺伝子の同定により、収量と食味に影響しない低カドミウム集積イネの育成に成功!
<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
教授 馬 建鋒(ま けんぼう)
(電話・FAX)086-434-1209