本学は6月23日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.91を発行しました。
本号では、学術研究院環境生命科学学域(農)の田村隆教授らの機械学習(Sparse解析)とゲノム編集を活用した抗ウイルス活性物質の増産の研究成果について紹介しています。
田村教授と山本倫生准教授、坂本亘教授、および京都大学、東京大学、神戸大学などの共同研究グループは、抗ウイルス活性、抗原虫活性、抗真菌活性を持つ核酸系抗生物質シネフンギンの増産技術を開発しました。
シネフンギンは発酵生産にかかわる遺伝子群が休眠状態にあり、極微量(< 2 ppm)しか生産されません。そこで遺伝子発現のボトルネックである転写装置RNAポリメラーゼ(RNAP)を任意に改変できるゲノム編集技術を開発しました。
次にRNAPの突然変異効果の文献データをアミノ酸パラメータAAIndexに参照してSparse解析を行い、機械学習に基づく多重変異コードを設計しました。ゲノム編集技術を用いて変異導入した結果、高生産株が得られました。
さらに量子化学計算により変異導入箇所はRNAPの内部アミノ酸残基とmRNAの強い相互作用が示され、今後の変異設計に利用できる新知見が得られました。
この研究成果はウイルス感染症の治療薬として期待されながら、社会的にまったく利用されていない核酸系抗生物質の実装化に導く重要な起点になると期待されます。
岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示すリサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学を構築し、「岡山から世界に新たな価値を創造し続けるSDGs推進研究大学」となるため、強みある医療系分野などの国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も本学から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場が求める革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.91:Meeting high demand: Increasing the efficiency of antiviral drug production in bacteria
○Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)
2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行して来ました。またAAAS(American Association for the Advancement of Science)が提供する、世界最大規模のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」を利用し、世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
<OU-MRU Back Issues:Vol.83~Vol.90>
Vol.83:Skipping a beat — a novel method to study heart attacks (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)高橋賢研究准教授)
Vol.84:Friend to Foe — When Harmless Bacteria Turn Toxic (大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)垣内力教授)
Vol.85:Promising imaging method for the early detection of dental caries (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)島田康史准教授)
Vol.86:Plates and belts — a toolkit to prevent accidental falls during invasive vascular procedures (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)大原利章助教)
Vol.87:Therapeutic potential of stem cells for treating neurodegenerative disease (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授&山下徹准教授)
Vol.88:Nanotechnology for making cancer drugs more accessible to the brain (岡山大学中性子医療研究センター 道上宏之准教授)
Vol.89:Studying Parkinson’s disease with face-recognition software (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授&山下徹准教授、岡山大学病院 森原隆太助教&田所功医員)
Vol.90:High levels of television exposure affect visual acuity in children (学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(医) 松尾俊彦教授&学術研究院医歯薬学域(医) 頼藤貴志教授)
※Vol.90(2021年度発行)より教員(研究所・附属病院等を除く)は「学術研究院」の下、各学域に所属することになったため、2021年度以前の大学院研究科表記から学術研究院学域表記に変更しています。
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id10092.html
<参考>
・「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
・岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」
【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm◎adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.91 発行
2021年06月23日