国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.104 発行

2022年09月16日

 本学は9月16日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界の一般のみなさんなどに届けるWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.104を発行しました。
 本号では、本学異分野基礎科学研究所の墨智成准教授と豊橋技術科学大学IT活用教育センターの原田耕治准教授の全身性感染を考慮した宿主内免疫応答の数理モデルを開発し、そのシミュレーション実験により、新型コロナ後遺症の原因 (Long COVID) の一つと考えられているウイルスの宿主内持続感染が起こることを示しました。そして、感染が全身性であることが宿主内持続感染を可能にする一つの要因であることを指摘した成果を紹介しています。
 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白質が結合するACE2受容体は、上気道や下気道の上皮細胞だけでなく、血管内皮や中枢神経を含め様々な臓器・器官の細胞表面に発現するため、インフルエンザのような限局感染とは異なり全身性感染の症例が多数報告されています。
 新型コロナウイルス感染者の長期的臨床観察により、患者が入院したかどうかにかかわらず、免疫応答の最前線で活躍する自然免疫の一つである樹状細胞の数が、発症から約7ヶ月後においても、著しく減少したままであることが報告されています。一方、本研究の数理モデルによるシミュレーションにおいても同様の現象が観察されており、ウイルスの宿主内持続感染がその背景にあると考えられます。また、高齢者で一般に認められる不十分あるいは不完全な免疫応答が、重症化の典型的なリスク要因となるのと同時に、それが宿主内持続感染の可能性を高める原因となり得ることを見出しました。
 今後本研究を発展させてゆくことにより、ワクチン接種における記憶免疫細胞による宿主内持続感染回避の可能性や、感染後のブースター接種による後遺症の早期回復あるいは悪化の可能性など、理解が急速に進んでいくことが期待されます。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示すリサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学を構築し、「岡山から世界に新たな価値を創造し続けるSDGs推進研究大学」となるため、強みある医療系分野やその関係する分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も本学から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場やヘルスケアに活かせる革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.104:The determinants of persistent and severe COVID-19 revealed.


○Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)
2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行して来ました。またAAAS(American Association for the Advancement of Science)が提供する、世界最大規模のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」を利用し、世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。


<OU-MRU Back Issues:Vol.96~Vol.103>
Vol.96:Automated cell image analysis (資源植物科学研究所 長岐清孝准教授)
Vol.97:Artificial intelligence helps to determine cancer invasion (学術研究院医歯薬学域(医)河原祥朗教授)
Vol.98:Okayama University launches clinical trials of a jawbone regeneration therapy using human BMP-2 transgenic protein derived from Escherichia coli (学術研究院医歯薬学域(歯)窪木拓男教授)
Vol.99:A rapid flow process that can convert droplets into multilayer polymeric microcapsules (学術研究院自然科学学域(工)渡邉貴一研究准教授)
Vol.100:Understanding insect leg regeneration (学術研究院医歯薬学域(医)板東哲哉講師)
Vol.101:Oral tumor progression mechanism identified (学術研究院医歯薬学域(歯)河合穂高助教)
Vol.102:Controlled cell death by irradiation with light (学術研究院医歯薬学域(薬)須藤雄気教授)
Vol.103:High-quality growth (学術研究院自然科学学域(工)鈴木弘朗助教)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務・企画部広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm◎adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。

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