Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.50 発行
2018年03月13日
本学は2月27日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.50を発行しました。
2012年より本学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者等にニュースやトピックスを交えて配信し、本学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、強みある医療系分野の更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行。
本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)免疫病理学分野の大原利章助教と同研究科消化器外科学分野の二宮卓之助教らの、がん細胞内の鉄を制御することで幹細胞性が喪失する研究成果について紹介しています。
大原助教と二宮助教らの研究グループは、本学大学院自然科学研究科の妹尾昌治教授が樹立した「マウスiPS細胞由来のがん幹細胞モデル」を用いて、鉄キレート剤で細胞内の鉄(Fe)を減らすと幹細胞性が喪失することを世界で初めて発見しました。
私たちの生命を脅かすことのあるがんに対する治療には、さまざまな方法があります。その中でがんが治療に“抵抗”する原因として、がんの腫瘍内に幹細胞性を持つがん細胞である「がん幹細胞」が存在することが考えられています。しかし、がん幹細胞に対して、有効な治療法はありません。この問題を解決するために大原助教らは鉄に注目。鉄は生体にとって必須の微量元素ですが、過剰になると発がんを引き起こすことが知られています。がんも生体内の鉄を巧みに利用して、生存していると考えられており、がん細胞内の鉄を制御することは、がんの生存を脅かしていると考えられます。今後、がんの新規治療法になり得ると考えられます。
本学は、平成25年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術として、より早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.50:Iron removal as a potential cancer therapy
<Back Issues:Vol.43~Vol.49>
Vol.43:Potential origin of cancer-associated cells revealed (大学院自然科学研究科(工学系) 妹尾昌治教授)
Vol.44:Protection from plant extracts (中性子医療研究センター 小野俊朗教授)
Vol.45:Link between biological-clock disturbance and brain dysfunction uncovered (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)宝田剛志准教授)
Vol.46:New method for suppressing lung cancer oncogene (大学院自然科学研究科(工学系) 世良貴史教授)
Vol.47:Candidate genes for eye misalignment identified (大学院医歯薬学総合研究科(医学系) 松尾俊彦准教授)
Vol.48:Nanotechnology-based approach to cancer virotherapy (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)藤原俊義教授)
Vol.49:Cell membrane as material for bone formation (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)松本卓也教授)
<参考>
Okayama University e-Bulletin://www.okayama-u.ac.jp/user/kouhou/ebulletin/
【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
E-mail:[email protected]
(18.03.13)
本号で紹介した研究成果を担当した大原利章助教と二宮卓之助(右) | 既存の抗がん剤では、増殖性を抑えられても、癌幹細胞の抑制が難しいため、再発などを引き起こします。鉄キレート剤の使用では、増殖性と癌幹細胞性の両方の低下が認められます |
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。 また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています |