国立大学法人 岡山大学

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岡山大学が国際原子力機関(IAEA)協働センターに指定

2022年09月30日

 岡山大学は、オーストリア・ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)より、がん治療のひとつである「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の分野において、初のIAEA協働センターの指定を受けることになり、9月26日にIAEA本部において協定書への署名が行われました。わが国におけるIAEA指定機関は、4機関目となります。
 この指定を機に、本学ではIAEAと密に連携し、新世代のがん治療であるBNCTの技術開発、特に薬剤と加速器システムや高度専門人材を育成する教育プログラムの開発などに取り組みます。地域の中核となる研究大学としての役割を十分に担いつつ、BNCTの研究・開発・教育を推進し、グローバル拠点を確立し、世界のウェルビーイングに貢献していきます。

● IAEA本部で協定書に署名

日   時 令和4年9月26日(月)15:30 ~ 15:50〔ウィーン日時〕
(IAEA第66回総会)
場   所 国際原子力機関(IAEA)本部
主な出席者ナジャト・モクタール 国際原子力機関(IAEA)事務次長
引原 毅  在ウィーン国際機関日本政府代表部 特命全権大使
槇野 博史 岡山大学 学長
那須 保友 岡山大学 理事(研究担当)・中性子医療研究センター長

● 経緯・背景
 岡山大学とIAEAは、中性子とホウ素を用いたがんの放射線治療であるBNCTついて、長年にわたり共同研究を行っています。2016年にBNCTに関する研究教育の協定締結、さらにBNCTの国際基準(TECDOC)の策定に向けて協働し、2020年に更新しました。BNCTは、ホウ素を含む薬剤を腫瘍細胞に優先的に取り込ませ、その後、腫瘍部分に中性子が照射されることで、非常に腫瘍細胞にターゲットを絞った形で治療が行われます。また、中性子と腫瘍内のホウ素原子の間で非常に短い距離の核反応が細胞内で起こり、健康な組織は温存されるメリットもあります。

● IAEA協働センターと岡山大学での今後の活動
 原子力技術の利用を促進するためにIAEAでは、世界中の指定された機関と協力を推進しています。協働センターでは、そのネットワークを通じて、原子力に関わる研究やその安全と確実な応用に関連する独自の開発及び訓練を実施しています。現在、36カ国に58のIAEA協働センターがあります。今回の指定を受けて本学では、以下のことを実施します。
・BNCT施設の建設を目指す研究機関への支援
・BNCT専門家の教育及びトレーニングの提供
・IAEAの「マリー・スクロドフスカ・キュリー・フェローシップ・プログラム」による、本分野に関心を持つ若い女性大学院生の受け入れ
・BNCTを支援するための標準的なプロトコルの開発
 さらに本学では、BNCTに関する既存の医学物理学専門コースを英語に翻訳し、より多くの世界の人々に提供するとともに、ホウ素医薬品の組織内分布の測定に関する研究などを組織する予定です。

●ナジャト・モクタール IAEA事務次長のコメント
 「今回の岡山大学の協働センター協定は、BNCTに対する関心が世界中で広く高まっている時期に締結されたものです。岡山大学は、この分野でのIAEA活動の良い中心的存在となります。」

●槇野博史 岡山大学学長のコメント
 「岡山大学がIAEA協働センターに指定されたことにより、今後IAEAと連携を密にし、新世代のBNCTの技術開発や教育プログラムの取り組みをさらに加速させていきます。また、BNCTの研究・開発・教育のグローバル拠点として積極的に情報発信するとともに、世界の健康と平和に貢献していきたいと考えております。」

●BNCTについて
・世界的で高まるBNCTの進歩への関心
 近年、医療に使用する加速器型中性子源の小型化が進み、病院内に設置することができるようになりました。これにより、医療機器として登録され、臨床の場でBNCTを行うことが可能になりました。現在、日本ではサイクロトロンを用いたBNCTシステム、治療計画装置、ホウ素含有医薬品が、切除不能な再発頭頸部がんに対する治療として承認されています。このことが世界中の関心を呼び、企業が市場に参入し、多くの新しい施設が建設中または計画中です。BNCTに関連する業務に携わる施設は30以上になりました。
 IAEAでは、2001 年5月に中性子捕捉療法に関する技術文書 (IAEA-TECDOC-1223)“Current status of neutron capture therapy”を発刊しております。IAEA-TECDOC-1223 の発刊より20年以上たち、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いられるホウ素(ボロン10)はボロカプテイト(BSH)からボロノフェニルアラニン(BPA)へ、中性子源は原子炉から加速器へ、そして適応範囲は脳腫瘍から頭頸部がん、悪性黒色腫などへと拡大されています。2020 年には世界を先駆けて、頭頸部がんに対する加速器 BNCT システムを用いた BNCT の保険診療が日本で開始、さらに 2019 年より皮膚がん(悪性黒色腫もしくは血管肉腫)の治験が開始されています。世界でも加速器システムを用いたBNCTプロジェクトが次々と開始され、IAEAが事務局となり2019年10月28日~11月1日に BNCT に関する専門家会議、その後、コロナ禍の状況を鑑みてハイブリッド型で 2020年7月27日~31日に技術者会議、2021年12月13日~ 17日に専門家会議、2022年3月14日~18日技術者会議を開催してBNCTに関する技術文書の策定を岡山大学が支援してきました。TECDOC の発刊に向けて最終調整が行われております。

■参考
・国際原子力機関(IAEA)総会のサイドイベントでホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の現状を報告
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id6103.html
・国際原子力機関 IAEAと新しいがん治療法に関する協定を締結
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id6222.html
・国際原子力機関IAEAと協定調印のWeb会議を挙行 最新がん放射線治療法BNCTに関する協定を発展継続
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id9471.html
・ワークショップ「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の研究・教育」を開催
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id11402.html


<お問い合わせ>
岡山大学中性子医療研究センター
特任准教授  井川 和代
(電話番号)086-235-7785
  https://www.ntrc.okayama-u.ac.jp/

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