「黒正 巌」先生と黒正賞
黒正 巌(コクショウ イワオ)先生は、明治28年岡山市(旧上道郡可知村)に生まれ、旧制第六高等学校を経て、京都帝国大学経済学部に学び、大正15年同大学農学部教授(農史講座担当)に就任、百姓一揆の研究などにより日本農業経済史について優れた業績を挙げ、この方面の権威として認められました。先生は、単に研究者であるばかりでなく、教育にも情熱を注がれました。
昭和19年母校第六高等学校の校長に就任、大戦末期から終戦後の最も困難な時期に教育に努力され、戦災にあった同校の復興にも大いに寄与されました。また、昭和24年の学制改革に伴う岡山大学の創設の際にはその中心となって活動され、特にその広大な津島地区の用地を確保して現在の本学の基礎を築かれたことは特筆すべき功績であるとともに、本学関係者の銘記すべき事実であります。
昭和24年9月、先生は、病のため急逝されましたが、先生の存在とその功績を永く記憶にとどめるため、十三回忌にあたる昭和36年、記念事業が興され、岡山大学関係者、六高卒業生、知人から寄せられた寄附金をもって、第1の事業として先生のブロンズ胸像(岡本錦朋氏作)が作られ、附属図書館前に設置されました。第2の事業として記念賞制度を設けることとし、この運営のため、昭和37年8月、黒正記念財団が設立され、前記の寄附金の一部と、その後に寄せられた寄附金を基金に充て、この果実による記念賞を黒正賞として、岡山大学を新たに卒業する学業及び人物の優れた学生に授与することになりました。授賞は、昭和37年度卒業生に始まり現在に至っていますが、この制度は、青年学徒を愛し、その教育に情熱を注がれた先生にふさわしいものと考えられます。
黒正 巌先生
黒正賞