岡山大学 法学部

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シンポジウム「多様な主体の連携・協働による法教育」(2014年11月23日)報告

シンポジウム「多様な主体の連携・協働による法教育」(2014年11月23日)報告

1 日 時  2014年11月23日(日) 午前10:30~12:00
2 場 所  岡山大学 大学院自然科学研究科棟2階 大会議室
3 参加者  約35人
4 内 容
 小・中・高等学校で法に関する学習の充実が図られていることに対応し、平成19年より、岡山大学法学部が呼びかけ、岡山弁護士会、学校教育関係者等により、岡山法教育研究会を設立し、ジュニア・ロースクール岡山など法教育に関する活動を行ってきました。
 本年はジュニア・ロースクール岡山が第10回を迎えることから、ジュニア・ロースクールと同時に法教育シンポジウム「多様な主体の連携・協働による法教育」を開催しました。その概要は、次のとおりです。

4.1 基調講演 樋口 雅夫氏(文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教科調査官)
 「多様な主体との連携・協働を基軸とした法教育の在り方」
 我が国の子供たちの現状を見ると、日本の中学生・高校生のうち、「私の参加により、変えてほしい社会現象が変えられるかもしれない」と思う者の割合が、米国、中国、韓国と比べ、著しく少ないという調査結果がある。
 第2次教育振興基本計画(平成25~29年度)では、「教育行政の四つの方向性」として、「1.社会を生き抜く力の養成」、「4.絆つくりと活力あるコミュニティの形成」などが掲げられている。その中で、「中学生・高校生の社会参画に向けた実践力の育成」を目指すプログラム開発を進めている。
 外部の専門家との連携・協働による法教育の実践例も多数報告されている。多様な主体との連携・協働は、異なった考え方、アイデア、イメージ、発想法が出会い、切磋琢磨することにより、既成概念にとらわれない新たな考え方、手法を生み出しながら、社会問題を発見・解決するところに意味がある。

4.2 パネルディスカッション  
  樋口 雅夫氏  文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教科調査官
  中富 公一氏  岡山大学法学部教授
  原  智紀氏  弁護士(岡山弁護士会)
  高原 昭彦氏  岡山県立岡山朝日高等学校教頭 
  森川  悟氏  岡山県教育庁高校教育課指導主事(主任) 
  佐野  寛氏  岡山大学法学部教授 〔コーディネーター〕

【パネルディスカッションの概要】
(1)中富 公一氏
 いじめを苦にして自殺した中学生の遺書を見ると、①それが何故不正なのか言葉に出来ていない。②自分が悪いのか、相手が悪いのか分からなくなっている。③その結果どこで怒るべきか分からない。④イジメに抵抗できない。という状況がある。したがって、人権を教えるべきと考える。

(2)原 智紀氏
 平成26年8月11日に行われた「平成26年度 社会科・公民科法教育(法に関する学習)セミナー」(主催:岡山弁護士会・岡山地方検察庁・岡山地方裁判所)で実施した法教育に関するアンケートの回答結果をみると、学校教員による法教育の授業実践はある程度行われているが、弁護士その他専門家との連携はあまり進んでいないように見受けられる。
 また、法教育の授業を行うに当たり、専門家との連携で望ましい形態は、学校教員と専門家との協同による授業と回答されているが、実現可能性が高いと考えられている形態は、専門家による授業・講演が多くなっている。
 専門家による法教育授業も一つの在り方ではあるが、単発的な取り組みにとどまってしまう可能性もある。そうならないためには、専門家による授業をきっかけにして、学校教員と専門家が継続的な連携を図っていき、できるだけ望ましい形態に近づけていくことが重要ではないかと考える。

(3)高原 昭彦氏
 新教育課程では、法教育において、①「個人の尊重と法の支配」の最初に、「社会規範」「法と道徳」「法の目的」などを学ぶ。②「紛争解決と法」などの項目により、社会生活と法の関わりの意味を学ぶ。といった内容を指導することとなっていて、「生活の中に法がある」ことを理解させることをねらいとしている。
 これからの実践で重視したいことは、(1)主権者としての国民の、市民的素養としての「法理解」、(2)市民社会の基礎をなす概念=「契約」の理解と考える。このため、社会人講師の活用(法律専門家に限らず)を進めたい。

(4)森川 悟氏
 岡山県教育委員会では、企業・団体・大学等が持っている専門的知識や経験などを学校教育に取り入れながら、子どもの豊かな学びや成長を支援する「おかやま子ども応援センター」を設置している。その中で、支援していただける企業や団体等を「子ども応援人材バンク」に登録し、ホームページで公開している。岡山弁護士会からも登録していただいている。このような仕組みを通じて、支援する企業や団体等と学校のニーズとのマッチングを一層円滑に進めたいと考えている。

文責・中村 誠

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