科長のご紹介
科長 |
中尾 篤典 |
専門医 |
日本救急医学会(専門医・指導医)
日本外科学会(認定医,専門医・指導医)
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専門分野 |
救急医学,一般外科,外傷,侵襲学,医療ガス |
近年,救急搬送件数は増加の一途を辿る中,地域に根ざした総合的な初期対応や問題解決能力をもつ我々救急医の需要は,ますます高まる一方です。救急外来は社会の縮図とも捉えられ,緊急救命処置を必要とする患者さんから,受け入れ先が見つからない社会的弱者まで,多彩な患者さんが搬送されてきます。私たち岡山大学病院救命救急科は,重症患者の救命はもちろん,救命が困難となる患者さんの終末期ケアや家族のサポートも含め,様々な患者さんや社会のニーズに応え,地域に貢献できるよう,まい進してまいります。
主な対象疾患
小児から高齢者まで,心肺停止や急性心筋梗塞,脳卒中,敗血症などの内因性疾患から外傷,熱傷,中毒,熱中症などの外因性疾患までありとあらゆる救急疾患や病態に対応します。また,小児救命救急センターも併設されており,急性脳症,急性呼吸不全,ショックなどの重症小児や重症呼吸不全などで体外式膜型人工肺(ECMO)が適応となる患者さんも積極的に受け入れています。さらに,かかりつけ患者さんの救急疾患や外傷,複数診療科にまたがる病態などで救急初期対応が必要な全ての患者さんを対象とします。
診療内容と特色
救命救急科の医師は,救急科専門医や指導医をはじめとして,外科や麻酔科,小児科など複数の専門医資格を有しており,15名以上の専従医師が2交替制で24時間365日常駐し,他の院内専門診療科と密に連携を取りながら高度な救命医療を提供しています。救急外来では主に救急車やドクターヘリで搬送される救急患者の初期治療に始まり,重症患者は高度救命救急センター内に12床ある救急集中治療室(EICU)にてその後の全身管理を行います。その他,救急一般病床4床を有し,経過観察のためやEICUからの転棟した患者さんを受け入れます。救急搬送数は増加の一途を辿っており,当院は地域救急医療の最後の砦としての役割を果たす必要があります。そのため,集中治療や専門的な治療が必要なくなった患者さんは速やかに近隣病院へ転院をお願いしています。
2023年度からはドクターカーの運用を開始し,救急医によりいち早く救急医療が提供できるようになったり,複数傷病者が発生した事案などでの現場での迅速かつ最善の判断や救命処置の開始に繋げられたりできるようになりました。ドクターカーが運行できない時間帯は岡山市消防局とも連携し,市の救急車によるピックアップ方式で24時間現場出動の体制を維持しています。また,ドクターカーはECMO搬送など重症患者の病院間搬送にも役立っています。
また,当科の診療の特徴として,重症の救急患者さんは病態が複雑であったり様々な社会背景を有する患者さんも多かったり,治療方針や目標設定に難渋するだけでなく,時には救命が難しくなる事態も出てきます。そこで,医師や看護師だけでなく,薬剤師,臨床工学技士,理学療法士,管理栄養士,ソーシャルワーカーなど多職種カンファレンスを定期的に,必要に応じて臨時に実施し,治療方針の協議や情報共有を行いながら,常に本人が望む治療やケアを家族と共に模索しています。中でも終末期において選択肢の1つとなり得る脳死下臓器提供は,2024年6月までに30例以上の経験があり,我々医療者と家族が一緒に考えるプロセスを経ながら,本人が望むであろう“看取り”が提供できるよう心がけています。
その他,災害拠点病院として,国内の災害現場にDMATを派遣したり,地域の学校などでの心肺蘇生講習,地域住民への救急対応や人生会議の座談会なども行ったりしながら,医療の最先端から最後尾まで,消防とも協力しながら地域に根差した救急診療にあたっています。
研究について
我々は医局内に独自のラボを持ち基礎研究と臨床研究を両輪で進めています。基礎研究では,抗炎症作用や抗酸化作用を有する水素ガスや一酸化炭素といった治療的医療ガスを使用し,虚血再灌流障害や敗血症などの侵襲病態に対する効果やそのメカニズムを探求する研究を行っています。臨床研究では心停止や外傷などのデータベースを用いた研究に始まり,岡山市消防局のデータを用いた地域救急医療に関する研究,集中治療後症候群に関する研究など救急集中治療に関する幅広い分野の研究を行っています。また,中等度障害の心停止後症候群に対する体温管理療法に関するランダム化比較試験や急性呼吸促迫症候群に対する水素ガス吸入療法など世界をリードする研究も主導的に行っています。
詳しくは,
高度救命救急センターのホームページをご覧ください。
診療実績
診療実績については,
高度救命救急センターのホームページをご覧ください。
スタッフ紹介