てんかんの罹患率は意外に高いことが知られ,およそ100人に1人が生涯にけいれん発作を起こすと言われています。てんかん治療は従来,精神神経科,脳神経内科,脳神経外科,小児科,小児神経科などの診療科がそれぞれで行ってきたわけですが,特に器質的疾患がある症例や難治な症例では外科的治療の適応があり得ること,小児てんかんの患者さんが成人になると治療を小児科から移行する必要があることなどから,てんかんを診療科横断的に診ることが重要であるという認識が高まり,当院は2013年にてんかんセンターを立ち上げ,総合的な視点からてんかん診療を行って参りました。また,てんかん患者さんは様々な支援を必要とすることが多く,当院総合患者支援センターもてんかんセンターと協働して患者さんのニーズに耳を傾けて参りました。さらには,病院間の医療連携を図るために岡山県てんかん診療ネットワークも構築し,運用して参りました。こうした活動が実を結び,2015年に当院は岡山県より,てんかん治療を専門的に行っている施設として「てんかん診療拠点機関(現在はてんかん支援拠点病院)」の指定を受けました。こうした機関は現在30都道府県で指定され,医師,行政機関,てんかん患者や家族からなる「てんかん治療医療連携協議会」が設置され,コーディネーターによる患者,家族への専門的な相談支援,他の医療機関や自治体,関係機関との連携,患者,家族,地域住民や医師への教育・啓発活動などが行われています。また2023年に日本てんかん学会は,てんかん患者とその家族がてんかんという疾患を克服し身体的,精神的,社会的に充実した幸福な生活を送るという目的を達成するために,地域医療機関および関連機関と連携して適切な医療とケアを提供するための組織化された専門医療施設を,「包括的てんかん専門医療施設」として全国で22施設定めました。てんかん診療やてんかん外科を専門とする医師が在籍し,MRIやビデオ脳波などの専門的な検査を定期的に行っていることなど,数々の要件を満たす必要があり,岡山県では当院が指定を受けております。このように当院では長年にわたり体系だったてんかん診療を行って参りました。今後も岡山県のてんかん患者さんのために,当院の各部署が協働して診療にあたって参ります。
患者の皆さまへ
病院からのお知らせ